※うみねこパロ
(フェーリ→縁寿、レムレス→天草)
「レムレス……ちょっと、レムレス聞いてるの?」
「え、ああ、すみません」
コトリと置かれたマグカップから白い湯気が立ち、彼の姿を隠す。彼とはレムレスのことで、私の……えぇと、何と言えばいいのかしら。付き添い人とでもしておきましょうか。で、まあ彼と共に(と言っても彼は事情をあまり知らないから一緒に居るだけ)魔女の出したゲームについて考えているの。私には、ぶっちゃけるとさっぱりわからない。
レムレスに聞いてみても、曖昧に笑うだけで。少しだけ拗ねた私は真里亞お姉ちゃんの日記に没頭した。不思議な力が宿るお姉ちゃんの日記のおかげなのか、生まれながら私に宿る力のおかげなのかはわからないけど、私も少しだけ魔法が使えるようになった。お姉ちゃんのようにキラキラな笑顔を作れたら、私は。キュッと唇を噛み締めていたら、ふわりとブランケットが肩にかけられた。
「湯冷め、しちゃいますよ」
「あ、ありが、とう」
正直、びっくりした。またそんな紳士ぶって、モテるとでも思っているのかしら。以前聞いたときは笑顔で「まさかまさか」と答えたけど、きっと本心ではそう思っているんだわ。私がときめくとでも?駄目ね、全然駄目。
ついクスリと笑ったら、レムレスは驚いたようにこちらに目を向けた。なによ、私が笑うことが珍しいとでも言いたいの?無表情に戻してじとりと見つめたら、彼は困ったようにヘラッと笑った。本当よく笑うわね、レムレスって。少しだけうらやましくも思うけれど、私にはこの表情が似合っているってわかっている。笑顔が似合わないって、わかっているから。ハァとため息をついてマグカップをくるくると弄んでいたら、レムレスの指にほっぺたを優しくつままれた。必然的に口が横に広がる。不覚にも私は慌てた。
「ひゃっ、な、なにするのよ!」
「ため息をついたらしあわせが逃げますよ、それにお嬢、可愛いんだから無表情で見つめないでください」
「この私が?ハッ、何言ってるのよ。私には笑顔なんていらないわ」
「そんなこと言わないで。ねぇ?」
彼の大きな手の平が、私のほっぺたを包んでむにゅっと寄せた。きっと今の私はとても変な顔をしているわ。ああもうやめてちょうだい。紳士ぶらないでよ、寒気がするから。こんな酷いことを言っても、レムレスは笑った。どうして、あなたは笑えるの?どうしたら、そんな風に笑えるの?
真里亞お姉ちゃんなら……戦人お兄ちゃんなら、わかるのかな。私だから、わからないのかな。そんなの不公平だわ。私が知らないことをみんなが知っているんだから。もし教えてくれる人が居たら、なんて。そんなこと言ったって、いまさら叶うはずないってわかっていた。だから、無駄に希望を持つことも、望むことも止めたの。
「……私はこれが楽なのよ」
「強がりはいけませんよ、誰だって笑顔が1番なんですから」
「ほら、またそんなこと言って」
「ありゃりゃ、また言ってましたか?そりゃあ、すみません」
いつものおふざけ口調に戻ったレムレスの手の平が離れていく。なんだかほっぺたが熱くてしかたなかった。きっと彼の体温が熱いからだって、そう思い込むことにしましょう。決してあなたにドキドキなんてしてないわ!か、勘違いしないでちょうだい!
(うみねこはいつになったらなくのかしら)
なんだか気分が高まっ……違う、気のせいよ、気のせい