子シグと子レム







さっきからそう、すんすん鼻を鳴らしてほっぺたを濡らしている。男の子でしょ。そう言ったらもっともっとしゃくり上げたけど、声は押し殺したまま。地面にペタリと座り込んで、声を出さずに静かに涙を流している。


「泣かないの」

「だっ、て……だって」

「しょうがないんだよ」


ぽんぽん頭を撫でて、レムレスのとなりに座る。ぺしゃんこになった花壇の花。それがレムレスが泣き出した理由。鳥さんか猫さんか小学生のおにーさんか、それとも雨とか風とか。どんなに考えても、これぐらいしか浮かばなかった。


「ふかこーりょく」

「……なにそれぇ」

「大人が言ってた」


難しい言葉はよくわからない。でも、意味はなんとなく感じる。合っていても間違っていても、自分達の中で「真実」ならそれでいい。レムレスのほっぺたを両方の手で挟んで、目から溢れる涙を舐める。ぽけーっと――うん、泣き止んだみたい。
レムレスを横目で見ながら、花壇の砂を素手のままザクザク掘る。少し湿った砂で手や服がべとべとになったけど、ぺしゃんこになった花を起き上がらせた。そしたらね、涙の跡が残ったレムレスに笑顔が溢れたの。それだけでも嬉しくなって。ごし、と擦ったら鼻の頭にも砂が付いたけど気付かなかった。


「ありがとう、しぐくん」

「お水、あげようよ」

「うん」

「元気になあれ」

「……うん!」


ちっちゃいプラスチックのじょうろを持ってきて、水を入れる。それを傾けると、掘り返した新しい土の色がどんどん変わっていった。お花さん、元気になればいいね。明日もあさってもその次もの日も、こうやって笑えたらいいね。レムレスが笑った。嬉しくて、つられて笑った。















(はなはな咲いた?)

咲いたよ!ここにも、そこにも



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