夢のあとさき
22

ユウマシ湖のユニコーンは話の通り、透き通る湖の底に横たわっていた。確かにこれでは近づくのは難しいだろう。
「よし、たのむぞしいな!ウンディーネに俺たちを運んでもらってくれ」
ロイドは期待を隠さずに言うが、クラトスにそれを遮られる。
「……待て。それは無理だろう」
「どうして?」
「ユニコーンは……清らかな乙女しか近づくことができないのよ」
ジーニアスの疑問にリフィルが答える。そう言えばユニコーンにはそんな言い伝えがあったような。
「少なくとも私とロイドとジーニアスは無理だ」
「ふーん。それなら女だけで行くしかねぇのか?」
「じゃあ姉さんたちだけで……」
男性陣がいうが、リフィルは首を横に振った。
「私は……いいわ。コレットとレティが一緒に……」
「あ、あたしは資格なしだって言うかい!?」
慌てたようにしいなが声を荒げた。「資格?」とロイドとジーニアスが声を揃えて言う。
「二人して声を揃えるんじゃないよ!」
しいなは怒ったようだったが照れ隠しだろう。まあ、あんまり声を大きくしたい話題じゃないからね。
クラトスはしいなの様子につとめて冷静に言った。
「……ではコレット、レティシア、しいなで行けばよかろう」
「ああ、待って。私もパスで」
行かせられそうになったので私も慌てる。クラトスがすごい勢いでこっちを見た。リフィルとしいなにもまじまじと顔を見られるので適当に笑った。うん、本当におおっぴらにしたくない話題だ。
「何で姉さんと先生はダメなんだよ」
「大人、だからよ」
「でもレティとしいなは同じくらい……」
「じゃ、じゃあ召喚するよっ!」
まだ疑問の解けていない顔のジーニアスをしいなが無理矢理黙らせてウンディーネを召喚する。とりあえずお子様は黙ったので私はほっとしてユニコーンの救出を見守った。

結局現時点ではユニコーンの角でコレットの疾患を治癒することはできないらしい。ボルトマンの術書に期待するしかないかと肩を落としてしまう。
「それにしても、ちゃんと教育したほうがいいのかな」
「……そうね」
ジーニアスはともかく、ロイドとコレットの無知っぷりに心配になってしまった。私は旅立つ前にリフィルに色々と気をつけるべきことを学んだのだが、ロイドは旅立ちが突然だったわけだし。男の子だからまだ平気だとは思うけど。
「レティ、あなたは旅してる間に……恋人でもできたの?」
リフィルが聞きにくそうに、でもずばりと聞いてくる。私は肩を竦めた。
「いろいろあっただけ」
「そう。つらいこと……かしら?」
「リフィルが心配することじゃないよ。そんな顔しないで」
「あなたは無茶をするでしょう。心配に決まってます」
「ごめん」
「謝ってほしいわけじゃないわ」
でも、謝罪以外の言葉が見つからなかった。無茶をしたのは事実だし。
ユアンのことを思い出して苦い気持ちになった。いい思い出ではない。何より、あの男の思惑がわからないのが不快だった。


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