夢のあとさき
15

外に出ると砂漠だった。ここは例のトリエットの基地だったらしい。砂漠は苦手なのでうんざりしたが、ロイドと会ったというユアンのことを信じればまだトリエット付近にいる可能性もある。
だがトリエットに入るのは憚られた。あのときディザイアンを何人も殺して、もしかしたら町の人たちは報復されていたかもしれない。
私は迷ってそのまま旧トリエット跡に向かうことにした。
日が落ちてきたので野営して、遺跡に向かう。しかしそこは空振りだった。遺跡の扉が開いていたのでコレットたちが来ていると思ったが、中には誰も見つからなかった。魔物たちに追い回されながら最奥の封印のあるらしき場所まで行ったのに無駄だったとは。
一人で魔物を相手するのはしんどくて、その日は最奥で眠った。コレットたちと距離が開くのは不安だが、急いだ挙句危ない目にあうのもごめんだ。
翌日遺跡を出るとトリエットに戻った。入るのはやっぱり躊躇われたけど、また入れ違いになってしまってたらどうしようもない。
顔を隠して情報を収集すると神子一行は数日前に来ていたという。次はオサ山道へ行くと言っていたらしいので、もう抜けてしまってるだろう。
「神子の一行はどんなふうだったんだ?」
「金髪の子が神子様だったでしょう?あとは銀髪の女性と剣士の男性がいたわ」
「剣士……?茶髪か?」
「ええ、かっこいい人だったわ〜」
……ロイドじゃないかもしれないな。髪を逆立てた少年のことを尋ねるとおかみはああ、と頷いた。
「最初来た時はいなかったけど、赤い服の少年と銀髪の男の子もいたわね」
「なるほど。一行は人数が多いのだな」
「前の神子様のことは知らないけど、そうなのかしらね?」
銀髪の女性はリフィル、そして後から合流したのがロイドとジーニアスだろう。しかし剣士の男性は心当たりがなかった。護衛を雇ったりしたのだろうか?
宿のおかみに礼を言って出る。手早く装備を整えると私は砂漠を抜けに向かった。

オサ山道でもコレットたちに追いつけず、私は急いで北上していた。イズールドでは船が出ないはずなので陸路で向かっているだろう。次に向かう先としてはマナの守護塔だろうか?
ハイマへと大陸を北上する。これで二回目だが手強さは変わらなかった。急いだもののかなり時間を取られた気がする。
ハイマへついたがコレットたちの姿は見当たらなかった。宿で聞いてもまだ来ていないらしい。
「追い越したというのは考えられないし……」
参った、イズールドから船が出てしまったんだろうか?するとパルマコスタに向かった可能性が高い。
どうしようか悩みながら町を歩いていると前方からくる男性の様子がおかしいのに気がついた。なんだか夢遊病のようだ。
「マナ……ミコ……」
ぶつぶつと呟くのが聞こえてくる。マナ、の神子?コレットのことを知ってるのか?
「失礼、あんた……」
「ピエトロ!こんなところにいたのかい」
私が男性に尋ねる前に声がかぶせられる。その声の主は黒髪で、少し変わった服装をした女性だった。
「……」
「すまないね、こいつは少し……病気のようなもので」
「マナの神子、と言っていたが」
女性に尋ねると眉をしかめられる。「マナの神子?」と言う彼女の顔には隠しきれない苦いものが広がっていた。コレットのことを……知っている?いや、知っていたとして再生の旅を歓迎していないものなどいるのだろうか?
気になったけど、私は彼女ではなく男性の方を追求することにした。
「彼はどうしたのだ?尋常ではない様子だが」
「ああ……ピエトロはルインの近くの人間牧場から逃げ出して来たのさ」
「人間牧場から?」
私は慌てて彼の手を取った。エクスフィアは見当たらないのでホッとする。もしかして、もう取られた後なのかもしれないけど。
「なんだい、あんた?」
「人間牧場に収容された人たちにはエクスフィアがつけれられている。エクスフィアは、知ってるか」
「知ってるけど……」
「エクスフィアは人体に害がある。要の紋があればその毒は抑制されるが」
「そうなのかい。……なぜ、知ってるんだい?」
女性は鋭い目で私を見ていた。一般人ではないだろう。戦いに身を置いている人のように思えた。
彼女は人間牧場から逃げ出してきた男を気にしている。悪い人には思えなかった。
「説明するのは構わない。その前にこの人を送った方がいいのではないか」
「そうだね。その後に聞くよ」
女性は宿に向かって歩き始める。私もその後をついて行った。


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