夢のあとさき
幕間-2

ようやくたどり着いたトリエットの町。ディザイアンたちが指名手配の似顔絵を貼ったのを眺めつつ隠れていたロイドとジーニアスは、彼らが去った後掲示板に近づいていた。
似てない似顔絵にひとしきり呆れ笑った後、その横のものにも気がつく。
「他にも指名手配されてる人いるんだ」
「本当だ。えーと、レティシア……アーヴィング……姉さん!?」
ロイドは思わず声を上げてしまう。まさかディザイアンに指名手配されていたとは。
「姉弟揃って……」
「そういうハナシじゃねえだろ!姉さん、ディザイアンに捕まってるのか!?」
「指名手配されてるってことは、まだ捕まってないんじゃないの?ロイド、声が大きいよ」
「ああ……」
ジーニアスに宥められてロイドは冷静さを取り戻す。しかし、と改めて指名手配の似顔絵を眺めた。
「似てねえなぁ」
「似てないねえ」
ロイドのものと同じく、レティの似顔絵もさっぱり似ていなかった。男か女かすらわからないほどだ。
「コレットたちを追いかけるつもりだったけど、レティがこの辺りにいるなら合流したほうがいいかな?」
「そうだな、姉さんの情報も集めよう」
ロイドは頷いて二人は掲示板の前を去った。

トリエットの奥で占い師に神子一行の行く先の情報を得たロイドとジーニアスは火の封印があるという旧トリエット跡に向かおうとしていた。しかし町の入り口でディザイアンと戦闘になり、無事に勝利したものの背後から襲われてディザイアンの基地に連れていかれてしまう。
ジーニアスは難を逃れたものの、ロイドは一人牢に入れられてしまっていた。そこからソーサラーリングを用いて脱出したが、うろついているうちについにディザイアンに見つかり慌てて手ごろな部屋に逃げ込む。
「ふー、危なかった」
「何者だ!」
部屋には主がいた。青い髪の男はロイドに手をかざして魔術を打てる準備をしていることが分かった。
「人に名前を尋ねるときは、まず自分から名乗るモンだぜ」
「ははは!いい度胸だな。しかしきさまのような下賤のものに名乗る名前は、生憎持ち合わせていない」
「奇遇だな。俺もあいにくと、自分がいやしいってことを知らないような能無しに名乗る名前はないぜ」
余裕を装ってロイドは応える。その言葉が気に食わないという顔をした男は「きさま!」と魔術を放とうとしたが、防御姿勢を取ったロイドの左手を見て目を丸くした。
「それはエクスフィア!まさかきさまが、ロイドか!」
「……だったら?」
「……なるほど、面影はあるな。それにさっきの言い草……姉弟そろって同じとはな」
「姉さんを知ってるのか!」
予想外の言葉にロイドは反応した。よく考えれば、レティも指名手配されているのだ。ディザイアンと顔を合わせたことがあっても不思議ではない。
ロイドはさらに言い募ろうとしたが、男の部下が部屋に入ってきてそれは中断された。男は別の扉から抜け出し、そこにジーニアスたちが駆け込んでくる。
「ロイド!生きてる?」
ジーニアスだけではなく、コレットたちの声にもロイドは安堵した。姉と会ったという男は気になるが、今はこの場を切り抜けるほうが重要だ。
剣を構える。その切っ先をロイドはボータに向けた。


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