夢のあとさき
幕間-1

「結局、レティ帰ってこなかったね」
落ち込んだ声色で呟いたのはジーニアスだった。ロイドはそれを黙って肯定する。

今日は神託の日だった。コレットの十六歳の誕生日。明日からコレットは再生の神子として旅立つ。
ロイドの姉もコレットの友人だった。レティは半年ほど前、突然旅に出た。たぶんコレットのためだろうとロイドは思っている。
レティはロイドより剣の腕がたった。コレットの旅業についていくと昔から公言していたくらいだ。だからコレットの旅立ちまでには戻ってくると思っていたが、そうはならなかった。
「姉さん無事かな……」
姉の強さは知っているが、ロイドは思わず呟いてしまう。旅立ちから便りも何もない。最悪の事態もつい考えてしまうほどだ。
二人は言葉少なになりながら村へ戻る。コレットの家に行ったら自分もついて行くと言おう、とロイドは拳を固めた。

ロイドの決意は旅の傭兵、クラトスに一蹴されて終わった。
むしゃくしゃしたロイドだったが、その後の人間牧場での出来事や養父に聞いた自分のエクスフィアのまつわる話で頭がいっぱいになってしまっていた。
旅のことについて伝えにきたコレットたちにそれを聞かれたのはよかったのか、悪かったのか。ロイドが気持ちを落ち付けようと母の墓に向かうと墓前にはクラトスが立っていた。
「……姉がいるのか」
母親のことを聞いたと思ったら今度は姉について聞かれる。母がディザイアンに殺されたことについて、姉さんは知ってるのかと叫んだのが聞こえていたのかとロイドはそっぽを向いた。
「いる。今は行方がわかんねえけど」
「行方不明?」
「姉さん、コレットとすごい仲良くてさ。剣も強いんだ。だから神子の護衛になるってずっと言ってたんだけど……半年前、旅に出てそれっきり」
「なぜ旅に出たのだ?」
「わかんねえ。コレットが旅立つまでには戻ってくるって言ってたんだけど」
ロイドは姉の置き手紙を思い出した。「ロイド、コレットを守ってあげてね。」そう書いてあったことを。
多分自分が戻るまで、ということだったのだろう。でも姉が帰ってこない今、旅について行ってコレットを守るのは自分のすべきことなのではないかと考える。
「そうか……」
そう呟いたクラトスが遠い目をしていたのにはロイドは気がつかなかった。


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