夢のあとさき
11

パルマコスタはおそらくシルヴァラントで最も栄えている町だろう。アスカードから数日かけてたどり着いた光景に私は感心してしまった。
整然とした街並み。人々には今まで訪れたどの街よりも活気がある。なんとなくここまで来たかいがあったと思った。
しかし、トリエットで出会った行商人には感謝してもしきれない。ここに来る途中、ハコネシア峠では法外な値段で通行証を売っていたのだ。あそこはパルマコスタの管轄なのだろうか?何故人の出入りを阻むような政策をとっているのか謎だ。
宿を取り町に出るとあちこちからドア総督という人物の評を聞くことができた。ドアはパルマコスタを治めている人物で、ディザイアンにも果敢に抵抗しているらしい。「ドア総督がいればディザイアンも怖くない」と言うが、果たして本当だろうか?疑ってしまったのはここまでの間にディザイアンに虐げられる人たちを見て来てしまったからだろう。
ドア総督のことも気になったが、私はまずパルマコスタの学問所に向かった。本は生徒でなくとも読めるらしいのでありがたく読ませてもらう。

学問と言っても、歴史についてはそこまで研究されていないらしい。数週間ほど通ったが空振りで私は宿でへこたれていた。
「分からない……ディザイアンのことを調べた方がいいのかな……」
人間の遺跡にはヒントは少ないのではないか。なら、ディザイアンについて、彼らの目的を調べればおのずとこの世界の仕組みについてわかるんじゃないのか。
そう思うとドア総督に会うのがいい気がする。長い間ディザイアンに抵抗してる人物だ、何か知ってるかもしれない。
――最悪の場合も考えられるが。

結論から言うと最悪の場合だった。
おかしいと思ってたんだ、パルマコスタの人間牧場のディザイアンはなぜドア総督を殺さないのか。反乱されて彼らにいいことがあるはずないのに。
ドア総督はディザイアンに通じていた。どうやら多額の献金をしているらしい。理由としては妻を人質に取られているから、だ。
そのことがわかって、どうやってドア総督を使うか私は考えた。だが難しくて断念する。私では彼の妻を救えないし、おそらく何年も妻のためにディザイアンに従ってる彼を私の言葉で動かすこともできないだろう。
それでは、と牧場の調査をすることにする。パルマコスタの人間牧場はパルマコスタから少し離れた場所にあった。
覗いただけでも人々へのひどい仕打ちがわかる。私は人間牧場の付近にしばらく滞在してディザイアンの言葉から情報を集めることにした。

わかったことは、この牧場の主人が「マグニス」という人物であること。パルマコスタを馬鹿にしていたので歯牙にかけていないであろうこと。人々のことを「培養体」と呼んでること……なんの培養をしているのだろう?
真っ先に思い浮かんだのはエクスフィアだった。私はエクスフィアを要の紋なしでつけさせられていたのだ。よく観察すると牧場の人たちもそうで、エクスフィアの何か実験に使われているのかもしれない。でも培養という言葉とはいまいち結びつかない。
そもそも、エクスフィアは要の紋なしでつけると人体に毒なのだそうだ。どのような毒かは分からないけど、その毒を培養してるとか?人々を間接的に殺しているようなものなのかもしれない。
どうしても気になる。
考えなしかもしれない。でも私は、人間牧場に侵入することにした。


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