夢のあとさき
10

マナの守護塔の調査にはかなり時間を費やしたが、やはり手がかりは少なかった。そうすると、向かう先はアスカードか。バラグラフ王廟が近くにあったが、あそこは入れないらしい。だがアスカードは遺跡の町というくらいだから研究者もいるかもしれない。
アスカードは遺跡のある観光地として栄えているため宿も多い。一番安い宿を選んで泊まり、町の中を歩いて回った。
壁画には精霊の姿が描かれている。精霊というのは一体どんな存在なんだろう。女神とはまた違うようだけど、トリエットがイフリートの存在で暑いようにアスカードがシルフの存在で風が強いならやはり現実に影響を及ぼすものなのだろう。
「神子が封印を回ると言っても精霊に会うわけではないんだよね」
不思議だ。ならなぜ精霊の封印を回るのだろう?なぜ封印を解放するとマナが増えるのか……いや、本当に封印を解いているのか?
宿で歴史に詳しい人がいるか尋ねるとライナーという人物を紹介された。
「レティさんと言うのですね!いやあ、この石舞台には色々と言われがありまして」
が、ライナーは観光客の案内のような説明をしてくれるだけだった。それにしてはかなり詳しかったが、精霊のことは研究でもよくわかっていないらしい。
「精霊についてですか……。色々と説はありますが」
「分かっていないんだな」
「ええ、残念ながら」
「そうか。案内ありがとう。話はとても興味深かった」
ライナーには駄賃を握らせて帰らせる。リフィルと気が合いそうな人物ではあったが。

翌日からは念のためにバラグラフ王廟へと向かった。思ったよりも遠くて苦労したが、手がかりは少ない。
「コレットがいれば入れたかもなあ」
遺跡を見上げる。神子にしか入れない場所というのが多すぎやしないかと文句を言いたくなった。これでは神子について分かっていることがわずかでも仕方ないという気持ちになる。
……もしかして、神子については秘匿されるべきものなのだろうか。誰かが秘匿している、というか。
その誰かは……クルシスなのではないか。天の機関、クルシス。女神マーテルが「神」でないなら、クルシスとは一体なんだろう?
世界を管理する?シルヴァラントをこのように衰退させてなんの得があるんだろうか。クルシスには神子が封印を解き救いの塔に行かないとマナを供給できない理由があるのか?
「わからないことだらけだ……」
イセリアを出た時から進歩している気がしない。
私には時間がないのに。どうしたらコレットを救うことができるんだろう。
「……ユアンなら、救えるのかな」
ふとあの男を思い出す。それも分からない。何よりもユアンを思い出した自分が気に食わなくて私は首を横に振った。


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