※アイチ♀ですが、普通に読めます しかし設定上♀なので注意 アイチに彼氏が出来たらしい。と信じられない、否、信じたくない話を耳にした。その一言が鼓膜を捉えた時、その意味を理解することは出来ず暫くその場に立ち竦んだ。 それ以来俺は何もする気が起きず勉学にも支障をきたしていた。学校でも呆然としていることが多くなりさすがの三和も本気で心配してくる。俺は必要最低限のことしか口を開かないために事は全く解決しない。三和にさえ自ら言うつもりはなかったし、誰に言うわけでもなく己の中で消化するつもりだった。だが、奴は不意を衝いてきた。 「アイチのことだろ」 何を言われても冷静に軽くあしらってきたがアイチの名を呼ばれた途端に肩が震えたのを三和が見逃すはずはなかった。 「図星かー。ちょっとカマかけたつもりだったんだけどな」 「…三和」 「そう怒るなって。で、アイチがどうした?フラれた?まあお前みたいな仏頂面だったらさすがのアイチもなぁ」 「違う」 「え、違うの?まさかアイチに彼氏が出来たとか!でも、櫂くんラブなアイチに限ってそりゃないか。あはは………って、え…もしかしてマジ?」 「…噂で聞いただけだ」 三和と少々言葉を交わした後重い足取りで帰宅し、その後のことは覚えていない。気付けば制服のままベッドに身を沈めており、どうやらいつの間にか眠っていたようだ。動く気にもなれないがブレザーの皺が気になり重い体を起こしてクローゼットへ向かう。 憂鬱な心持ちで戸を開こうとした時一枚の写真が目に入った。カードキャピタルの奴らと写真を撮った時に律儀にもアイチがわざわざフォトフレームに入れて、くれたもの。どうすることも出来ずそのまま棚の上に置いていた。普段目につくことはなかったが何故だろうか今日は追い討ちをかけるように視界に入ってきた。 (アイチ…) あの時、たまたま耳に入ってきただけだがはっきりと「先導アイチに彼氏が出来た」と聞いた。アイチと同じ学校の奴らが話していたのだから確かな情報なのだろう。 だが、納得がいかない。 三和も言っていた通りにアイチは俺を慕っていた。それが尊敬からなのか恋慕からなのかはわからないが、恐らく後者であろうと信じていた。信じたかった。俺に向ける眼差しに少なくとも尊敬以上の念が籠っていると思っていたのは単に俺の自意識過剰であったのだろうか。 どうしようもない焦燥感と後悔が今までの俺への罰のように襲ってきた。 ────────── まさかのアイチ不在でした… 続きます! |