住宅街の一角で、まだ日も高いうちからとんでもない行為が行われているなどということを一体誰が想像しただろうか。


「ねえ、櫂くん。どうして最近僕に何もしてこないの…?」

「どういう意味だ」

「言い方が悪かったね。何で手を出してこないの、ってことだよ」


どちらも同じ意味だろうと思いつつ、櫂はアイチの言葉の真相を探ろうとしていた。訊き返したのはアイチの言葉の意味がわからなかったからではない。勿論、聡い櫂のことであるからそれくらいの言葉の意味を推し測ることなど容易である。では何故と思われるが、それはアイチの行動にあった。
いつも行為に及ぶ際、手を出すのは決まって櫂である。奥手なアイチから誘うことなど有り得なかったし、第一、まだ未熟なアイチにとって行為そのものが理解できなかった。櫂と肉体的な関係を持つ上で快楽などを教え込まれたわけだが、同時に櫂無しでは快楽に溺れることはできなくなり、己では為す術を知らなかった。
それがどうしたことか。そんな未だに純真といってもよいアイチが櫂を押し倒している。アイチの口から初めて発された言葉と今の状況、これを現実のものとは到底理解できない。故に、櫂はアイチの真意を知りたかった。



「櫂くん。僕ね、覚えたんだよ」


アイチは妖艶な笑みを浮かべ、櫂のジーンズのファスナーをゆっくりと下ろす。そしてその手は更に下の布にも触れる。


「な…っ アイチ、やめろ…」

「だって最近シてないから溜まってるでしょ?だから、僕が処理してあげるよ」

我慢しないでねと付け加えた後、アイチは何処で覚えたのか淡々と事をこなす。櫂のモノを舌で愛撫するその姿はいつものアイチとは似ても似つかない。そんなアイチは、想像もつかないような驚くべき積極性で櫂を絶頂へと誘った。






「…気持ちよかった?」

「う、すまない…」


顔に射出された櫂の精液を拭い、尋ねてくるアイチの姿を見て櫂は罪悪感を抱く。白濁など不相応な幼い顔に己の欲を出してしまったことは良心の呵責に悩むには十分な要因であった。だが、行為の最中に櫂はふと気付いた。アイチにこのような行為を行わせるきっかけを作ってしまったのは自分ではないのか、と。アイチの言葉の通り、最近は忙しいこともあってか行為に及ぶことは勿論、アイチに会うことさえもままならなかった。アイチは寂しかったんだな。
だが、申し訳ないと思いながらも暫くこのままでいてもいいのではないかという考えが櫂の頭を過った。今まで知らなかったが、アイチには俺を悦ばせる才能があると気付いてしまった以上、いつものアイチに戻してしまうのは勿体ない気がする。何も知らない純粋なアイチも好きだが、快楽に溺れて自ら誘ってくる淫乱なアイチも嫌いではない。


「続き、しよ?」


首を傾げて誘うアイチに、櫂は首肯する他はなかった。

さあ、堕ちるところまで一緒に堕ちよう、アイチ。



20110919



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