※BLではありませんが、夢主ちゃんは出てきません。
「じゃじゃん!今日から新台入荷〜!ねぇ、誰か一緒に行かね?……え、何お前らどーしたの?」
10時になっても部屋から一向に出てこない弟達は薄暗い部屋でどんよりとした空気の中布団の中で仲良くお寝んねしていた。うわ、何この空気湿っぽ〜い。
「どーしたの?じゃねえよ風邪で寝込んでんだよ見りゃわかるだろ。」
風邪だったらしい。マジか。
「風邪…えー!じゃあ誰も一緒にぱちんこ行ってくれねーの?!」
「当たり前だろ!」
「そっかー。あっ!じゃあお兄ちゃんが看病してやるよ!」
弟達が財布を各自隠してあるだろうところを片っ端から探す。あ、チョロ松の発見。とりあえず全員の財布をかき集めたところで全てを抱え部屋を出る。
「ちょっ、おそ松兄さん何やってんの?!みんなの財布どうする気?!」
これはスルー。つか叫ぶ元気あんじゃん。とりあえずパチ屋に向かい、新台…ではなくいつも勝つお気に入りに一直線。弟達の有り金全てを使い、倍以上に増やしたところで辞めておく。あんま調子に乗ると負けるんだよな。まあ、俺の金じゃないしやろうと思えば出来るけど!俺ってゲスいな〜なんて考えながら勝ち金を持って薬局へ。
「すみません、ちょっといいっすか?」
「はい、何でしょう?」
「よく効く風邪薬はどれですか?」
風邪薬でしたら、こちらはどうでしょう。あ、ありがとうございます。普段女性と喋る機会がなさすぎて自分から尋ねたのに速攻で会話を終わらせる。これぞ童貞。誇れたもんじゃねーっつーの。そそくさとその場を離れ食品系売り場へ向かう。栄養ドリンクやウィダーや飲むゼリータイプのもの数種類を全て五つずつカゴに入れる。あいつらプリン買ってったら喜ぶかな。あ、冷えピタ忘れてた。買わなきゃ。あれ、なんか俺主夫っぽくね?てか母親みたいじゃん!母親って大変なのな〜、とか考えながら冷えピタもカゴの中へ投入。そろそろ財布の中身の限界金額に達しそうだからこれで終了。お会計をするためレジへと並ぶ。
「あらあなた、沢山買うのねえ。」
突然前に並んでた全然知らないオバサンに話しかけられる。
「あ、はい。沢山の弟が風邪で寝込んでるので。」
「あら、そうだったの?お兄さんが看病なんて偉いわね。寝込んでいる弟さんたちのためにも早く帰っておあげなさい。私の前に入れてあげるわ。」
「えっ、あっ…」
ほらほら遠慮しなくていいから。半ば無理矢理前に押し出される。何かちょっといいオバサンだ。会計を済ませた俺は、ありがとうございましたとオバサンに言い残して薬局を出た。家を出てから既に1時間ちょい。まあまあ時間かかった。そしてお金もまあまあかかった。お釣りの五千円を千円ずつ弟達の財布に戻してやる。月末だから元々所持金は少なかったし、もうすぐ小遣い入るしいいか!190円という微妙な小銭は俺の財布へ投入。
「ただいまー!」
家に着いた俺は真っ直ぐ弟達のいる部屋へ向かう。やはりどんよりした空気は変わらず、むしろどんよりさが増してる気がする。咳き込んでるやつ増えてるしマスクしろよ。マスクも買っとけばよかった。
「おかえり、おそ松。」
「おー。大丈夫か、カラ松?」
「うぅーん…心配は、無用だ…ぶらざー。」
全然大丈夫そうじゃない顔でカッコつけんなよ。真っ赤な顔して体温計を咥えたまま寝込むカラ松にマスクを付けてるチョロ松。いつもうるさいくらい喋る十四松までもが大人しい。あ〜、これ結構辛そうだな。
「とりあえずお前ら冷えピタはれ。」
ぽいと冷えピタを渡すと全員え?という顔をして俺を凝視。そんな見つめられたらお兄ちゃんてれるわあ。なんつって。
「あとゼリーとかプリントか買ってきたからそれ食え。んで食べたら薬も買ってあるから飲んで寝てろ。」
「お、おそ松兄さん…!」
おそ松兄さんが真剣に看病してくれてる!奇跡だ!なんて声を聞きながら、お前らの財布から買いましたなんて言えねえと悩む。
「「「ありがとう!」」」
本気で感謝されてたまには真面目になるのも悪くないなと思う。結局、後日自分の財布事情を知った弟達にコテンパンにやられて看病なんてクソくらえと思い直したけどな。
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