「す、好きです」

授業と授業の合間の休み時間。
理科準備室の入口で一人ぼけっと立ち尽くす。

目の前には極限まで顔を真っ赤にした女の子。そして、背が高く赤みがかった髪をした男の子。

やばい。やばいぞ。
やっちゃったよ。

「……失礼しま、」

そこまで口にしたところで、今にも泣きそうな顔をした女の子がわたしの真横を走り抜けていった。


「………」
「………」
「…あの、邪魔しちゃってごめん」


先に女の子がエスケープしたことでこの場から去るタイミングを完璧に逃した。気まずさから素直に謝罪するも、目の前の男の子は只々キョトンとしている。

ど、どうしよう。
わたしだって今すぐここから逃げ出したいけど先生に頼まれてる資料を取らないとだし……。
どうか空気を読んで颯爽とこの場を後にしてください遠山くん。

「あ!」
「えっ!」

悶々と葛藤していると、突然大きな声を出されて肩が震えた。
斜め上に視線をやれば、大きな瞳をパチクリさせた彼に「あれや!光のや!」と指をさされる。
…いやいやいや。ちょっと待って。なんだその「光の」って!


「や、あのね?わたし財前先輩のじゃ、」
「わい遠山金太郎!よろしゅう!」
「ちょっ、話聞いてる?!」


ニコニコと笑顔を浮かべながら握手を求めてくる遠山くんに食ってかかるも、強引に手を握られてブンブンと大きく振られる。
中学の頃からゴンタクレだのなんだのって言われてただけあってパワーが物凄い…!肩外れそう!


「す、ストップ!ストップ遠山くん!」


成長期真っ只中らしく、わたしより数段背の高い遠山くんを見上げて声を張る。すると、思いのほかあっさりと手を解放してくれたものだから拍子抜けした。


「なあ!購買行こうや!」
「はい?」
「腹減ってん!たこ焼きパン食いたい!」
「いや〜、自由すぎるわ遠山くん」
「な?ええやろ?行こうやー」
「えええ」


そんな風に可愛く誘われても生憎わたしには資料運びというミッションがある。
…ていうよりわたし達さっき知り合ったばっかだよね?遠山くんの距離の詰め方がものすごいんだけど。なんだこのフレンドリーさ…!


「ごめん、わたし先生に資料頼まれてるから…。」
「ほな俺も探したる!それから購買行こーや!」
「や、でも」
「あ!それとお好み焼きパンも買わなアカンわ!」


ぐいっとセーターを捲くりあげて言う彼を前に、これはきっと何を言っても無駄なんだと悟る。

……ああ、うん。もうそれでいいです。
たこ焼きパンでもなんでも付き合います。

だけどね、遠山くん。
その前にひとつ言いたいのが…!


(ねえ、さっきの子いいの?)
(んー、知らん子やしようわからん!)
(そ、そっか…。)
(せやけど次会うたらありがとー言うで!そんで友達になれたらええなー)

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財前先輩出てこなくてすみません(汗)
金ちゃんと同い年ということで接点持たせたいなあと思い立ちまして…!
高校生金ちゃんはぐいーんと背が伸びててほしいです(*゚▽゚*)捏造すみません。
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