tns・他 | ナノ


「よっ!お前ん家ってたしかカキ氷機あったよな!」
「手動のならあると思うけど……え、なに?」
「わーい!そんじゃおじゃましまーす!」


部屋でゴロンゴロンしていたところに突然の来客×2。どちらも幼馴染ということで、今や見慣れた顔ぶれである。だけど突然訪ねてきて、その第一声が「カキ氷機あったよな」って。
いくらなんでも理解不能すぎる。


「ちょっ、なんなのほんとに!」
「急にカキ氷食いたくなったから来た!」
「食いたくなったから来た!って言われてもわたしん家カキ氷屋さんじゃないし」
「でもカキ氷機あるじゃん!俺らの家両方ともないんだよ〜!」


そう言って、やんわりわたしを押しのけながらトテトテと家の中に入っていくジロー。
一方がっくんはというとジローの脱ぎ捨てた靴を乱暴に揃え、自分の分をその横に並べるとさも当たり前のような顔で家の中に上がり込んでいく始末。
なんだなんだ、ここはあなた方のマイホームですかコノヤロウ!


「あれー?去年使った時はおばさんこの辺にしまってたよねー?」
「ちげーよ!この辺の棚だった!」
「あ、ほんとだ!あった!」


仕方なく二人の背中を追いかけてキッチンへと足を運べば、既に棚を漁ってカキ氷機を発掘していらっしゃる元気っ子たち。こいつらにかかったらプライバシーもなにもないな、まじで…。

そんなことを思いつつ、一応確認で冷凍庫の製氷室を覗き込んじゃったりするわたしもなんだかんだこの流れにノリ気なのかもしれないなあ、なんて。
いや、まあ、今年まだかき氷やってないしね!ちょっとテンションあがっちゃうよね…!


「そういえば今日おばさんはー?」
「ああ、なんか亮ママとアウトレッド行くって言ってた」
「そっか〜何買ってくるんだろうね!」
「どうせ自分たちの洋服とかだよ」
「てかシロップあんのシロップ」


ジローと世間話をしている途中、突然割り込んできたがっくんに肩を掴まれガクガクと力強く身体を揺さぶられる。うげっ!ちょっ、揺らしすぎ…!
するとそれを見ていたジローがひとつの戸棚に手をかけ、「ここじゃない?」と小さく首を傾げた。


「ほら、あったよ!いちごシロップ!」
「ジローもがっくんも我が家のキッチンを把握しすぎてて怖いわ…。」
「へへっ!何年幼馴染やってると思ってんだよ!」


嬉しそうに笑いながら一年間棚で眠っていたカキ氷機を水洗いするがっくん。その横ではジローが楽しそうにカキ氷の歌(作詞作曲:ジロー)を歌っていて、思わず背後から写メを撮ってしまった。
だ、だって可愛いんだもんこの子ら…!


「あ、#name2#ー!お前器の準備して!」
「へーい」
「でもって俺が削るからジローは氷入れる係な!」
「えー!俺も削りたいー!」
「俺がやる!」
「俺だって!」


ギャンギャン騒ぐふたりをスルーしてお皿を取り出していると、ふと身体に重い衝撃が走る。
何事…?と驚き混じりに視線を向ければ、赤いオカッパと金髪のふわっ毛が両方向からぐるっとわたしに腕を回していて。なんとなく黙りこくってお皿を持てば、図ったように両者が同時に口を開いた。


「「#name2#はどっちに氷削ってほしい?」」
「俺だよな!」
「俺でしょ?」
「……どっちでもいいよ」
「えー!なにそれ!」
「ちゃんと選べよバカ!」
「じゃあ間を取ってわたしがやる!」
「「えっ」」


* * *


「はい、できた!」
「ありがとー!」
「サンキュー!」


なんだかんだカキ氷を食べたかっただけのふたりを丸め込むのは実に簡単で、宣言通りわたしが三人分のかき氷を削りに削りきってやった。
昔から使っているドラエモソのかき氷機はそろそろガタが来ているらしく、相当な力を消費したってなもんで今や全身汗だくである。
うー、あっつい…!!!


「よし!それじゃあ冷房ガンガンのマイルームに行こう!」
「は?冷房なんてきれよ!」
「は?何言ってんのアホなのがっくん」


マジ顔でマジアホなことをかましてきたがっくんに、思わず批難の言葉とそれに見合った視線を投げつける。いやだって、なにが悲しくてせっかく冷やしておいた部屋をあっため直さなきゃならないの。

そう思ってエアコンのリモコンを取り合いしていれば、後ろから奇襲をかけてきたジローによってあっさりそれは奪い取られてしまった。
うわ、まさかの二対一…!


「#name2#!」
「な、なに?」
「カキ氷はね!暑い中で扇風機にあたりながら食べるのがいんだよ!」
「そうそう!ジローの言うとおりだぜ!」
「ねー!」
「なー!」
「えええ…なにそのこだわり…。」


力の抜けた声でそう抗議してみるも、マイペース人間ジローにわたしの言葉は届かなかったらしく、問答無用で冷房のOFFスイッチが押されてしまったのであった。


カキ氷と真夏の昼下がり


(なあ!食い終わったからもう冷房付けようぜ!)
(えっ!今度はつけるの?)
(だね!つけよつけよー!)
(26℃な、26℃!)
(おっけー!)
(こ、こいつら読めぬ…!!!)

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TOY様からお借りしました「夏休みお題」より。
甘くもなんともない幼馴染2人とのただの日常話です(´ω`)書いていて「なにこれ誰得?」とか思いましたがアップしてしまいました;;
とりあえず岳人慈郎コンビはとことん自由でわがままでいてほしいです…!
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