case1
「ハァハァ、ハァ!」
ちょっ、待って!待ってよ!
全力で疾走しているわたしの姿が見えているはずなのに、無情にも校門の施錠を急ぐ生活指導の担当教員。くっそ!血も涙もないのか…!
「あっ!」
あと少しで辿り着くというところで、そそくさとその場を去っていった教員に思わず声を溢す。
てかまだ指定の施錠時間より前じゃん!ギリ間に合ってんじゃん!何してくれてんだあのハゲ…!
「っ、ハァハァ……裏、回ろう」
とてもじゃないけど高さのあるこの正門を飛び越えることは不可能だ。ならば、これよりも少し低めの裏門から攻め込むしか道はない。
そう賢明な判断をくだして校舎の裏側まで回り込んでみたものの、実物を前にすると裏門もそれなりに高い。軽くわたしの身長くらいあるじゃん。……ど、どどどうしよう!
「(このままじゃどう足掻いても遅刻不可避…!)」
これ以上ないくらいに慌てふためき、周りをキョロキョロと見渡す。すると、ふと門の横のフェンスに人ひとり通れるほどの穴が空いているのに気が付いて。
……うん、四つん這いなら通れる!
一瞬で覚悟を決めると、先にカバンを敷地内へと放り投げた。続けて地面に手のひらと膝をつき、ハイハイの要領でフェンスの穴を潜ろうと身動いだその時である。
「う、おわっ?!」
「えっ、」
ドガシャーン!と物凄い音が隣から聞こえてぎょっと視線を向ければ、どうやら誰かが裏門に激突したらしくフラフラと数歩分よろめいたのが見える。ひいぃぃ!なにあれ痛そう!超痛そう!
「ちょっ、大丈夫ですか?!」
咄嗟にその人の方を振り向き声を掛ける。けれど、そこにいた人物を確認するや僅かに緊張感が走るのを感じた。……さ、3年生だ…。
しかも学年きってのヤンチャ者だと有名なポートガス先輩ときた。やりすぎない程度に着崩された制服はとてもよく似合っているし、さりげなく遊びをきかせている髪型も否応無しにかっこいい。
そんな賞賛するところしか見当たらないような人がまさか全力で門に正面衝突するだなんて……どうしよう。不謹慎だけど少し面白い。
「っ、痛ェ……てかそんなとこで這いつくばって何してんだおまえ!」
「いや、えっと、遅刻しそうだったんでショートカットをと思いまして…。」
「…なんで半笑いなんだよ」
「普段からこんな顔です。元から口角が上がり気味なんですよ」
我ながらナイス言い逃れ!と自画自賛したついでに「先輩はなんで門にぶち当たったんですか?」と最大の疑問をぶつけてみる。
そしたらまあジワジワと顔を赤く染めたポートガス先輩が大股で近付いてきて、「とにかく一旦起き上がれ!」なんて力ずくでグイッと身体を引っ張り起こされた。
「いだだっ!そんな強く引っ張って肩が抜けたらどうしてくれるんですか…!」
「顔面強打した俺のが痛ぇよ!」
「それは門に突っ込んだ先輩が悪いと思うんですけど」
責任転嫁はやめてください、と目で訴えてみる。すると着ていたブレザーを唐突に脱ぎ捨て、次いで淡いグレー色のカーディガンまで脱衣したかと思えばそれをせっせとわたしの腰元に巻き始めたではないか。
……って、えええっ?!
「きゅ、急にどうしたんですか!」
「実はな、俺も遅刻回避のためにこの門飛び越えようと思って死ぬ気で走って来たんだ」
「え?あ、そうだったんですか…。」
「けど見ず知らずの後輩がパンツ丸出しで四つん這いになってんの見ちまったおかげでこのザマだ」
「………はい?」
「それ、貸しといてやるから後で返しに来いよ」
腰に巻かれたカーディガンを指差しそう言ったかと思うと、「日数やべぇから先に行く!」なんて柵状の門を軽々と飛び越え、陸上部顔負けの速さで校舎へと走り去って行ったポートガス先輩。
「……。」
ちら、と視線を落とせば自然と目に入ってくる大きめのカーディガンに、先ほどの言葉を思い返してはムクムクと羞恥心が膨むのだった。
「パンツって……マジか…!」
まだまだ序章のうち(ていうかブレザーも脱いだまま忘れていっちゃってるし…)(いくら春先と言えどもシャツ1枚なんて寒くないのかな…?)
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お送りいただいたテーマをもとに書かせてもらっております(///)あと2話くらいポートガス先輩お相手で続きますー!偶然のえろハプニング大好きです…(///)
名前変換なくてすみません……