ハプニングに見舞われる


「エース隊長ってほんと部下思いですよね!よっ、イケメン!」
「おう!もっと褒めろなまえ!」
「あんまり褒めすぎると調子に乗りそうなんでそろそろやめときます」
「なんだよツレねぇな…っくしゅん!」

見た目に似合わず可愛いクシャミするんだな、隊長ってば。……あ、やばい。わたしもムズムズする。

「ぶっくしゅ!」
「なんだよぶっくしゅって。1ミリたりとも可愛くねーな」
「何言ってるんですか。一周回って可愛さ見出してくださいよ」
「無茶言うな」

薄暗い倉庫で軽口を叩き合いながらも、お互い手は止めない。いやでも、それにしたって。火薬誤爆させた罰が倉庫掃除とか古典的すぎない?マルコ隊長はもっとオリジナリティを追求すべきだと思う。

そしてそんな罰に無償で付き合ってくれるエース隊長は本当にイケメンだ。わたしだってハナから期待なんてしていなかった。ただ通りすがりに見かけたから「罰掃除はんぶんこしましょー?」なんて甘えてみたらこれがまた予想に反してOKをもらってしまった次第で。

いやぁ、なんでも言ってみるモンだよね…!要領のいいエース隊長をパーティに加えられたのはまじでラッキーすぎた。これぞ不幸中の幸い!

「…それにしたってすげぇ埃だよな」
「窓がないから余計にですよね」
「それな……っくし!」
「さっきから大丈夫ですかたいちょ、うう?!」

何度目かのくしゃみと同時にドン!と不吉な音が聞こえてふと目を向ける。すると視界に飛び込んできたその光景に思わず声が裏返った。
どうやらくしゃみをした拍子に背後の本棚に背中をぶつけたらしく、その衝撃で棚が!棚が…!

「危ない!」

……いや、冷静に考えれば何も危なくなんてなかったのだ。だってこの人メラメラ人間だし。本棚ごとき難なくすり抜けるはずなのだから。

けれど、瞬時にそんな判断を下せるわけもなく咄嗟に崩れゆく棚の前に飛び出してしまったのが運の尽き。背中へと襲いくるエグい重みに腕を震わせながら、下で目を見開くエース隊長に引き攣った笑みを向けた。

「な、にしてんだよなまえ」
「条件反射で、つい…。」

伸し掛かる本棚および幾冊もの本達が重くて身体を支える両腕がガクガク震える。ど、どうしよう。

「あはは…なんかこれって側から見たらわたしがエース隊長襲ってる構図に見えますよね…。」
「言ってる場合か!てか見えねぇよ!どう見たって本棚に押し潰されて絶体絶命な構図だろ!」
「っ、」

アホなことを言ってる間にも、元から少ない体力がどんどんと削られていく。たまらずグッと顔を歪ませると、気付いたエース隊長に「腕、支えなくていいから俺に体重乗せろよ」なんて気を使われて。
だけど、そんなことしたら……。

「め、めっちゃくっつくじゃないですか」
「だから!言ってる場合じゃねぇだろ!」
「だって胸とか当たるんですよ!隊長のことだから絶対興奮しやがるじゃないですか!」
「うるせぇ!ンなもんとっくにしてるっての!今更手遅れだバカ!」
「……は?」

な、なに言ってんだこの人…。おかげさまで違う意味の危機感まで湧いてきたんですけど!

「部下のことをなんて目で見てんですか…。」
「そんな首元広い服着てっからだろ!見えんだよ!むしろ密着してくれてた方が好都合なくれェだ!」

薄暗い中でもわかるくらい顔を赤く染めているエース隊長のその一言に、諸々の主張をまるっと捨てて腕の突っ張りを崩した。だって触れるよりも視覚的な方が恥ずかしい…!果てしなく羞恥!

そう思っての行動だったけれど、

「……お前着痩せすんのな」

そんなことを言われたらもうどっちもどっちだ。恥ずかしさがドングリの背比べだよふざけんなエース隊長…!

「最低だ!セクハラだ!」
「悪ぃ悪ぃ」

軽く言ったかと思うと、わたしの背に乗っている本棚に向かってグッと腕が伸ばされた。途端に重みが遠退く。が、すぐに「頭守っとけよ」なんて無茶振りをされて慌てて腕で頭をガードする。

「ま、待って待って!その体勢でこれ持ち上げられるんですか?!」
「上げるしかねェだろ」

笑みを含んだ声色が耳に届いた次の瞬間、エース隊長の身体に力が入ったのが伝わって来て。
なんだなんだと目を白黒させていると、わたしを乗せたまま腹筋の要領で本棚を持ち上げ、むくっと半身を起こしたりするものだから空いた口が塞がらなかった。





(そんなこと出来るんなら最初っからやってくださいよ!わたしの頑張りを返して!)
(テンパってて頭回んなかったんだよ)
(テンパるって…)
(お前が首元ゆるい服着てるのが悪、いでででっ!ちょっ!髪引っ張んなこら!)
(わ、忘れてくださいよ!もう!)
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【テーマ:倒れてきて下敷き】
いつもの如く中身のない話ですが…ガキっぽいエロみで溢れてるエースくんが好きです。しょうもないこと言ってるくらいがツボなんです(*´-`)


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