りんご!ゴリラ!


前回の上陸から1週間と2日。
ようやく新しい島へと到着したということで、クルー達の多くはソワソワと浮き足立ちながら街へと駆け出して行った。

故に、モビーの中はすっからかん状態。

あーあ、わたしも観光行きたかったな…。停泊1日目に船番が当たるなんて本当にツイてない。


「早く誰か帰って来ないかなぁ」


そんな独り言を呟きながらボーっと空を眺めてみる。すると、青空の中を流れゆく一見変わった形の雲が目に留まった。…なんだろう。心なしかパイナップル型に見えないこともない。


「マルコ隊長は今頃何してるんだろ?」


何よりもパイナップルから連想されただなんて知ったらさぞかし怒りそうだよなー、なんて口元を緩めながらその隣の雲へと視線を移せばお次はーー、


「わっ、あれハートっぽい!」


そういやmyスウィートダーリンはいつ帰ってくるんだろう?…ていうかスウィートダーリンってなんだかすっごく良い響きじゃない?やばくない?


「むふふ!」
「お前はそーいう変態じみた笑い方しかできねェのかよ」
「おっと!隊長のことが好きすぎてついに幻聴まで聞こえてきちゃった!どーしよう!」


これってまさか愛の力?きゃー!なんてジタバタ悶えていると、突如お尻に物凄い衝撃が走った。

「痛っ!えっ、だれ?!」

もしや敵襲か!と、威嚇するように後ろを振り向く。
けれど、そこに立っていた人物を認識するや先ほどまでの威嚇は綺麗サッパリ消え果て、代わりにいくつものハテナマークが浮上した。


「あ、あれ?なんで隊長がココに?せっかくの上陸なのに観光して回らなくていいの?」
「次の出航まで3〜4日あるらしいからな」
「あっ!じゃあ明日一緒にまわろうよ!むしろそのために今日行くのやめてくれた感じ?」
「ンなわけあるか!」


両手をグーにして、頭の両サイドをグリグリと痛めつけられる。ああもう、そんな風に照れ隠ししちゃうところも可愛いなあ!


「不器用な隊長に萌える…!」
「やめろ」


最後にゴツンと拳骨を落とすと、眠そうに眼を擦りながら甲板へと寝転がった隊長。
ジンジン痛む頭部をさすりながら同じように隣へと寝転がれば、パチリと視線が交わうなり「起こすなよ?」なんて不敵な笑みを向けられてつい頬が緩む。


「今の笑顔かっこいい…。」
「………」
「ねえねえ、隊長?」
「………」
「せっかくだからしりとりでもしない?」
「なあ、お前俺の話聞いてた?」
「たけのこ」
「勝手に始めんな!」


我ながら自然な流れでスタートをきれたと思ったんだけど、すかさず手刀を落とされ強制ストップをかけられてしまった。相変わらず隙がないなー。


「だってほっといたら寝ちゃうじゃん」
「いいだろ別に!寝かせろよ!」
「やだ!隊長が寝たらまた暇になる!」
「ひとりで神経衰弱でもやってろって」
「えーっ!」


大きな声を出したらとても嫌そうに顔を顰められたけれど、とりあえず今は隊長に寝られちゃ困る。
暇になるのは嫌だ…!


「わたしからね!しりとり!」
「………」
「しりとり!」
「………」
「しーりーとーり!」
「………」

「しーりーと「りんご!」


まるで呪い殺そうとしているかのように鋭い双眼で睨みつけてくる隊長。お、おっかない…!でもりんごってかわいい。その睨みとりんごのギャップ、とってもかわいい!


「ごま」
「マンゴー」
「ゴ?伸ばしのあとに出てくるオ?」
「ゴ」
「ゴム!」
「虫かご」
「…ごほうび!」
「ビンゴ」
「えっ!またゴ!?」
「付き合ってやってんだから文句言うなよ」
「……ご、ご、ゴジラ!」
「落語」
「……っ、」


なっ、なんて古典的なイジワル…!
そりゃあわたしが無理矢理付き合わせたのが悪いけど、隊長ったら大人気なさすぎるでしょ!しかもゴをチョイスしちゃうところがまた一層大人気ない。
さっきまであんなに怖い顔で睨んでいたくせに、今ではザマーミロとでも言いたげに口の端を吊り上げてるし。……超くやしいぃぃ!


「なんだよもう終わりか?」
「語尾にゴをつけるの禁止令を隊長に課す!ってことでもうゴ攻め禁止!」
「ハイハイ」
「じゃあ改めて……、ゴミ!」
「ミント」
「鳥!」
「リゾット」


+ + +


あのあと徹底されたト攻めを受け、もう二度と隊長を無理矢理しりとりに誘わないことを決めた。


(よーし今度はマジカルバナナね!)

(お前ほんと面倒くせェな)
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書いてから気付きましたが、白ひげの見張り番とかって隊別で役割分担されてそうですよね。
あれだけ人数いて個人に割り当てられるって中々ですよね…!!初歩的ミスごめんなさい;;
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