ともだちになろう


ギラリ、ギラリ。怪しい色のネオン光に包まれる夜の繁華街。

強面の海賊や綺麗に着飾ったお姉さま方が行き交う路地のド真ん中で、たった今声をかけてくれた彼へと勢いよく飛びついた。

だってこんな出会いが転がってるなんて思わないじゃん!テンション上がるのも仕方ないじゃん…!


「うわ!きゅ、急になんだよお前っ!」
「きゃっほー!待望の喋るシロクマくんだ!やばい!かわいい!」
「可愛くない!オレは男だぞ!」


出会って早々、ムッと目を吊り上げたシロクマくんに怒られてしまった。
そっか、男の子に可愛いはダメか…。
素直にごめんねと謝る。
すると、フンと鼻息を鳴らしながら「…まあ許してあげるけど」なんてツンデレな対応をされたりして。

どうしよう、素敵だこのシロクマくん…!


「あの!わたしなまえっていうの!前々からシロクマくんに会ってみたいと思ってて!」
「…オレに?」
「そう!ずっと会いたかった!」


言ってしまえば最初こそ「喋るシロクマ」に対する興味本位だったけど、実際会ってみたら迷子のわたしに声をかけてくれる優しさだったりツンデレな部分を持っていたりと垣間見えるその人間性(クマ性?)がとても魅力的だ。

……うん、決めた!この優しいシロクマくんとぜひ友だちになりたい!仲良くなりたい!

依然としてシロクマくんにしがみ付きながらそんなことを考えていると、ふと頭上から躊躇いを含んだ声が降ってきた。


「…おれ、」
「ん?」
「おれ、ベポっていうんだ」
「ベポ?」
「うん、シロクマくんじゃなくてベポ。…友だちになるんなら名前くらい知っとかないとでしょ?」
「えっ!」


ベポが発した最後の一言に勢いよく顔を上げれば、照れたように「なまえが言ったんだろ!友だちになりたいって!」とその肉球で両ほっぺを挟まれる。どうやら心の叫びが声に出ていたみたいだけれど、結果はオーライ。ベポとの友情が芽生えたことについつい頬が緩んだ。


「えへへ!じゃあ今をもってわたし達友だちだね!ベストフレ、」
「ベポ。お前こんなところに居たのか」


ベストフレンドよ!と続くはずだった言葉が一刀両断に遮られ、謎の低音ボイスに名前を呼ばれたベポはとても嬉しそうに目を輝かせた。
かくいうわたしもベポから身体を離し、ガヤガヤと騒がしくなった背後に目を向ける。

すると――、

「っ!」

振り向いた先に立っていた人物に、一瞬息が止まるかと思った。

………そ、そうだった。
ベポのとこのボスはこのイケメンさんだった!

モコモコ帽子から覗く鋭い双眼の下には隈があり、鼻筋は羨ましいほどにスッと通っている。身長だって申し分ないくらいに高くて、極めつけに細マッチョだ。
もう一度言おう、細マッチョなのだ。

うちの船ってば細マッチョ要員少ないからな…。こんな黄金バランスの細マッチョさん見れて幸せすぎる!眼福!

とまあ一味の先頭に立つイケメン船長さんを目の保養にしていると、いつの間にやら仲間の輪に加わっていたベポに手招きをされたのでとりあえず小走りで駆け寄ってみる。


「おっ?誰だこの子?」
「ベポの知り合いかァ?」
「おうおう、やるじゃねーかベポ!」


ベポの横に立った途端ワイワイと盛り上がり始めた彼らに、どこか白ひげのみんなの姿が重なって心細くなる。…そうだ。そういえばわたし絶賛迷子なうだった。
ベポの登場が嬉しすぎてつい頭からすっ飛んでたよ…。

「…なまえ?」

急にホームシックになって下を向けば、さっきと同じように大きな手で両頬を挟まれクイっと上を向かされる。
視線の先には心配そうにこちらを見るベポ。
出会って数分しか経たない友だちホヤホヤのわたしをこんな風に心配してくれるあたり、やっぱりベポは底なしに優しい。

……うん、平気。
ちょっと落ち着いた。
他力本願で申し訳ないけど、絶対に白ひげのみんなが見つけてくれるはず!
それまで大船に乗ったつもりでベポを堪能しようじゃないか…!むふ!


「へへっ、大丈夫!なんでもないよ!」
「ホント?」
「ほんとほんと!…でもってベポのお仲間のみなさん、はじめまして!さっきここでベポと友だちになったなまえです!怪しい者ではありませんので以後よろしくお願いしますー!」


いつも隊長がやるみたく、ピシっと角度をつけて頭を下げる。
そうすると、一拍の沈黙のあとにがしりと肩を組まれて。なんだなんだと顔を上げればキャスケット帽を被ったお兄やんに「ベポのダチなら大歓迎だ!なまえも一緒に行こうぜ!」と笑顔を向けられた。

周りのみなさんも暖かい歓迎ムードでホッと安心……だけど!ちょ、ちょっと待って!行くってどこに…?!

「ねっ、キャプテン!いいですよね?」

勝手に話を進めるお兄やんに引っ張られて、されるがままに船長さんの前へと駆り出される。

「(う、うわっ!)」

近くで見るとよりイケメンだなこの人!
ていうかなんか爽やかなイイ匂いまでするし…!香水?いや、それともフェロモンなの?

どっちにしろやばいよ、この色気…!
ムリ!わたしには直視できない!

あぁもう鼻血が出そ、

「とりあえずその鼻血を拭け」
「えっ?!」
「話はそれからだ」


(ひいぃぃ!ほんとに出た!穴があったら埋まりたいくらい恥ずかしいんですけど!)
(穴?浅くてよければ掘ろうか?)
(て、天然なところも素敵だよベポ…。)

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アンケート一位の赤髪さんより先に外科医さん出しちゃってすみませんんん!(涙)
もうちょっと続きます。次回はちゃんと隊長出します…(゚Д゚;)
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