それは俺の役目だろう?


「やっぱり空中散歩はいいねぇ…。」
「だな〜」

モフモフと触り心地の良いマルコ隊長(不死鳥ver)の背中の上でピクニック宜しく持参したシュークリームを頬張れば、隣に座る愛しの隊長が上機嫌にはにかむものだからゆるりと頬がゆるむ。
なんて破壊力が高いんだろう隊長のはにかみ顔ってば…!


「むふ!むふふ!」
「んだよ、こっち見んなアホなまえ」


そう言ってカプリとシュークリームに齧り付きながら軽蔑の視線を送ってくる隊長だけれど、その姿さえ胸キュンものだから困っちゃう!きゃっ!
とまあひとりで盛り上がっていれば、不意にペシンと頭を叩かれる。


「痛っ!何するの隊長!」
「うるせェ。お前がニヤニヤしてるのが悪ィんだよ」
「だってそれは、んぐ!」


冷めた目を向けてくる隊長にいつもの如く愛の言葉を紡ごうと口を開くも、黙ってろとでも言うかのように新たなシュークリームを突っ込まれて上手いこと口の自由を奪われた。……んもう、ほんとこれすごく美味しい。さすがはサッチ隊長お手製の白ひげシュークリーム!

ああ、でもどうせなら隊長の食べかけの方を食べさせてほしかったなあ、なんて。……へへっ!

「やめろ!邪なことを考えながらこっち見んな!」
「ぶへっ」

嫌そうに顔を歪めた隊長にぐいっと頬を押され、なんともマヌケな声が出る。ていうかなんでバレたのわたしの胸の内…!

引き続きグイグイと頬を押されながらそんなことを考えていると、チラリとこちらを振り向いたマルコ隊長から何やら含みのある笑みが送られてきて。


「なあ、お二人さん」
「ん?…って、あ!わかった!マルコ隊長も食べたいよねコレ!シュークリーム!」


ごめんごめん!と急いで紙袋からシュークリームを取りだし、食べやすいようにとクチバシの前にそっと差し出す。
すると、相も変わらずニヤニヤしたマルコ隊長が「あんまりイチャつかれると俺の肩身が狭ェよい」なんて素敵な発言をしてシュー部分を啄み始めたではないか。

ちょっ、イチャつくとかそんな…!嬉しすぎるお言葉をありがとうミスター不死鳥!


「はあ?イチャついてなんかねェよ!」
「いやいや今のはイチャついてた!完璧にイチャついてたよわたし達!」
「どこがだ、よっ!」
「いだっ!」


眉間に皺を寄せた隊長にピンとおでこを弾かれて、思わず手を引っ込めてしまう。そして、そのせいでまさかの二次被害なるものが発生してしまった。

……まあ、はい。簡単に言うとマルコ隊長に差し出していたシュークリームから手を離してしまったってなわけで。青い羽で覆われたその綺麗な背中にクリーム共々ぼてっと落とすという大失態を犯したのである。

う、うわお…。どうしよう。とてもじゃないけど顔が見れないぞ。


「…おい、#nane#」
「あっ!ハンカチ!ハンカチで拭きます!」


たしか持ってたはず!とズボンのお尻ポケットを探るため、その場で勢いよく立ち上がる。
するとまあ、お約束とでもいいますか…。タイミング良く前方から強風が吹き荒れて、ぐらりと身体が傾くのを感じた。


「おい危ねェぞ!早く座れよい…!」
「ぎゃ!む、無理!落ちる、っ!」
「落ちるっつーかもう既に落ちてんじゃねーか!バカなまえ!」


ふわりと宙に投げ出されたと同時に隊長のそんな声が聞こえて、そこでようやく「あ、わたし落ちてるのか」と状況を悟った。……って、そんな悠長なこと言ってる場合じゃない!
このままじゃわたし確実にジ・エンドじゃん!どうしよう!どうしよ、…う?!


「って、ぎゃあぁぁ!なんで隊長まで飛び降りてきてんの!?」
「っ、このままだと船に落ちるぞ!」
「そ、そうだよ!これきっと大怪我じゃ済まないよ!」
「まあ俺はロギアだし余裕だけどな」
「なるほど!」


つまりはわたしだけが死亡フラグってわけか!そうですか!猛スピードで落下する中そう理解すれば、突然手首を掴まれ隊長の方へとグッと引き寄せられる。

驚いて視線を向けると、そこには余裕綽々といった様子の頼もしい笑顔が。う、っわああああ!
鼻血出る、鼻血…!


「なんてかっこいいの隊長!」
「多少船焦がしちまうかもしれねェけどこればっかりは仕方ねェよな…。」
「はい、ナイススルースキル!」


なんて気の抜けたやりとりをしている間にもモビーとの距離はぐんぐん縮まっており、流石にじわりと焦りの色が滲む。


「ねえ、どうするの隊長?!」
「…こうする!火け、」
「待てよい!」


見慣れた構えをとった隊長を前に「火拳を下方に向かって放つことで落下の勢いを殺そうとしてるんだ!」なんて理解するのと同時。
頭上からマルコ隊長の怒声が聞こえて、落下の速度がガクンと落ちた。

その突然の失速に慌てて上を見上げれば、身体を人間の姿に戻し不死鳥の羽を背中に携えたまるで天使スタイルなマルコ隊長がそこに居て、火拳を放とうとしていた隊長の腕を力強く掴んでいる。


「ま、マルコ隊長…。」
「大丈夫かよい、なまえ」
「っ、うん!大丈夫!」


首を大きく縦に振ると「無事でなにより」なんてニッと微笑んでくれる。が、しかし。一瞬してスっと眼差しが鋭くなるのを目の当たりにして冷や汗が吹き出る。う、うわっ!これは100%怒ってますよね…?


「……おい、エース。お前あのまま船焦がすつもりだったわけじゃねェよな?」
「いや、だってそうでもしなきゃ失速出来な、」
「だから俺がなまえ拾いに行くって言ったんだろーが!お前まで飛び降りてどうすんだよい!」


ぐいっと片眉を釣り上げ、完璧にお説教モード。
ううっ、怒ってるマルコ隊長ってば相変わらず物凄い迫力…!その気迫に押されて思わずひくっと顔を痙攣らせていると、いつの間に着いたのかトンと地面に足が着くのを感じて。

「せ、生還できた…。」

重度の安心感からポツリと呟くものの、マルコ隊長は引き続きぷんすかしており、隣に立つ隊長がいじけたように小さく片頬を膨らませる。

でもちょっと待ってほしい。今回のことについて全ての原因はわたしにあり、怒られるべきは隊長じゃない。よし、ここはキチンと謝らないと…!

そう思い立って二人の間に入ろうとした時だった。


「たしかに後先考えねーで行動したのは悪かった!」
「あァ」
「ちょ、ちょっと待って!それだって全部わたしが、」
「けど!こいつを守んのは俺の役目っつーか、なんつーか…。」


下を向きつつそんな爆弾発言をかました隊長に、ポカンと開いた口が塞がらなかった。
未だにゴニョゴニョと何か呟いている声が聞こえるけれど、残念なことにその内容はちっとも頭に入ってこない。

熱くなる頬を抑えつつマルコ隊長へと視線を向けてみれば、どこか毒気を抜かれたように小さく笑ったマルコ隊長もチラリとわたしの方を見た。


「…だとよ、なまえ」
「え、あっ、うん…!」
「まあそーいうことならこれからもちゃんと姫さん守ってやれよい、エース王子」


にやりと口角を釣り上げたマルコ隊長がそう言えば、バッと勢いよく顔を上げた隊長が「はあ?!」と大きく声を張り上げて。

「違ェ!そういうんじゃなくて、一隊長として隊員のことを…!」

なんて焦ったように捲し立てていたけれど、その耳が真っ赤なところを見るあたり、少しは喜んでもいいのかなあ、とか思っちゃったり。

………むふふ!


(隊長はほんと素直じゃないなぁ!)
(だーかーら!違ェって言ってんだろバカ!)
(ツンデレ最高…!きゃっ!)
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長いこと書いていないとヒロインを動かすのが難しい難しい…!
後々読み返して修正入れるかもです、はい;;
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