こちょこちょこちょ


(ターゲットロックオン!)

決して声には出さず、心の中だけで呟くと目の前を歩く人物にそろりそろりと忍び寄る。
そして、手が届く距離まできたところで勢いよく地面を蹴った。


「くらえ!」
「は?って、ぎゃははは!」
「おおっ、効果抜群!」
「なっ、おいやめ、ぎゃははは、くすぐってェ…!」


涙目で大声をあげるサッチ隊長。
想像以上のその反応に思わず手を止めれば、直後にペシン!と軽く頭を叩かれてしまった。痛い…!


「急に何すんだコラ!」
「えへへ、突撃こちょこちょ遊びしてたの!」
「はァ?なんだそりゃ」
「暇すぎて何か楽しいことないかなーって考えてたら思いついた遊びでーす!」


イェイ!とピースサインを作って言ってみると、「あーそうですか」なんて清々しいほどの棒読みで返された。そっちから聞いといてそのリアクションは酷いと思う。


「んもう、サッチ隊長ってば反応薄いな〜」
「知るか!笑い疲れたんだよお前のせいで!」
「…ふーん」
「そーいうお前も十分反応薄いじゃねェか!」
「(あ、マルコ隊長発見!)」
「おい!聞いてんのかなまえ!」


未だ騒いでいるサッチ隊長の言葉は綺麗さっぱり総スルーして、お次はマルコ隊長の背中をいそいそと追いかける。
マルコ隊長はどんな反応するかな…!楽しみ!

…………よし、今だ!


「くらえ!マルコ隊、ブフッ!」
「………何してんだよい」


なっ、なんということだろうか。
勢いよく飛び出したまでは良かったのだけれど、マルコ隊長がサッと横に避けたものだから悲しいことに顔面床ダイブをしてしまった。鼻とおでこが超痛い…!


「ちょっ、なんで避けるの!」
「むしろなんで飛びかかってきたんだよい」
「べ、別に理由はないけど…。」


ここで素直に「こちょこちょしようとしてました」なんて言ったら冷やかな視線で睨みつけられるに決まっている。
それが嫌で必死に話を誤魔化すと、素早くその場を立ち去ることに成功した。

ふう…。今のは完全なる人選ミスだった。


+ + +


とまあ、そんなこんなでボーっと廊下を歩いていれば先方によく見慣れた後ろ姿を発見した。

オレンジ色のテンガロンハットにクセのある襟足。極めつけはその背中に背負う大きな大きな刺青である。

うん!あれは間違いなく隊長だ!
気付くや否や足が勝手に走り出し、勢いに任せてバッと飛びついた。


「くらえー!」
「………?」
「…ん?」
「………?」


えっ、ええええ?
何この無反応…!
ちっとも効いてないよ?!
思わぬ事態にブワっと冷や汗が吹き出す。

恐る恐る顔をあげてみると、当の本人が何食わぬ表情でこちらを見下ろしていたものだからさらに焦燥が滲んだ。ま、マジか…!


「…何がしてェんだよ?」
「いや、暇だったから突撃こちょこちょ攻撃でみんなの反応見て遊んでたんだけど…。なんで効かないの?」
「俺くすぐりとか平気な方だから、……てかお前今反応見て遊ぶとか言ったか」
「え、うん」
「つまり俺を遊びに使おうとしてた、と」
「い、いやいやいや!その捉え方は非常によくな、」
「問答無用!」


そう言われたかと思えば素早く壁際まで追い込まれて一切の身動きを封じられてしまった。

そして、良くか悪くか目の前にはニヤリと微笑む隊長の端正なお顔が。


「ちょっ!ちょっと待っ、」
「くらえ」
「っ!うひゃひゃひゃひゃ!ちょ、無理無理無理!あひゃひゃひゃ!」
「仕返しだバーカ」
「や、やめ!あははは!」
「やめてやんね」
「も、無理だ、って…!んっ、あ…!」


ぎゃっ!へ、変な声出た!無駄にエロい感じの声出ちゃったんだけどどうしよう!
そう思った途端に自分の顔が真っ赤になったのがわかる。ひいぃ!恥ずかしい…!


「おまっ!へ、変な声出すなよ!」
「うわあああ!隊長のせいじゃんかバカー!」
「あ、おい…!」



(隊長のアンポンタン!)
(うるせェ!元はと言えばお前が悪い!)
(そんなことないよ!確実に隊長のせいだからお詫びにチューしてほし、痛!)

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最後は変な声が出て恥ずかしがるヒロインとその声を聞いてあからさまに動揺(照れる)する隊長です。(一応解説…!)
不意に変な声出たりするとありえない位の羞恥に襲われますよね!
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