OTG | ナノ



数秒後、真っ暗な画面からようやく映像が切り替わった。
どうやら舞台は学校らしく、セーラー服に身を包んだ女の子が足早に階段を駆け上がってくるところから物語が始まる。

主演の子がグラビアで売り出しているからなのか、開始早々パンチラすれすれだったり胸を強調するアングルだったりと際どいカメラワークが多い気がする。こりゃあ男子高校生は嬉しいわなあ…。エロホラー的な感じ?


「…なんかアレだな」
「ん?」
「服の上からだとなまえとあんま変わんねえように見える」


何が、とは敢えて聞かない。あまりにくだらないその呟きを全力でシカトしていれば、両肘を立てて上半身を起こしたエースがひょこっと背後から覗き込んできた。
すぐ真隣にある横顔に視線をやると、潔すぎるほどに胸元を凝視していたエースが静かに口を開く。


「なあ」
「……。」
「今更だけどお前何カップ?」
「……。」
「なあって」
「あーもう!うるさい!ちゃんと映画見てなよ!」


思わず声を荒げるも、特に気にしていない様子で顔の前に片手を差し出された。


「じゃあ何番目?」


指を折りつつ「A、B、C」なんてゲスいカウントし始めたエースを最高に白い目で見る。まったくなんてデリカシーのないカウントをしてくれてるんだ!この場に紳士サボくんが居ようものなら……いや、いても状況変わらないか。意外とノるからなサボくん。


「なまえ、」
「それ以上聞いてきたら帰るよ」


吐き捨てるように言えばピタッと黙り込むエース。
姿勢こそ変えずわたしの肩辺りに顔があるものの、大人しく映画を見始めたので今までのセクハラ発言は大目に見てキャラメルコーン(ミルク味)でもいただくとしよう。…うん、うまっ!

「俺も食う」
「どーぞ」

あーっと開いた口にまとめて5個詰め込んでみたら軽くむせ込んだエースに頭を叩かれた。いて。



+ + +



あれから数十分。随分とストーリが進行した。劇中の雰囲気もだいぶおどろおどろしいモノになってきて、それに比例してエースが顔を伏せている時間も延びつつある。

たしかにこの純和風ホラーな感じは不気味だよなあ…。ネチネチ来る感じが余計に恐怖心を煽ってくる。なんて思っていれば、不意にシーンが切り替わる。

おおっ!き、際どい…!


「お風呂シーンきたよ」


俯くエースの頭をポンポンと軽く小突くと、「まじで!」なんて光のスピードで顔を上げて身を乗り出してきたからしょうもない。ここまでくるといっそ清々しいな。ミスターオープンスケベめ。


「すげえ!見えそう!」
「うわっ、変態がいる!」
「男なんて皆こんなモンだっつの」


言いながら食い入るように画面を見るエースにちょっとヒいた。
もう少し欲望を隠そうか!隠す努力をしようか…!なんて心の中で文句を垂れていると、今まで女の子の身体に焦点を当てていたカメラが引いて、不意に映されたシャワーヘッドから髪の毛があふれ出す。

そして次のアングルチェンジで画面いっぱいに髪の抜け落ちた女性の顔面が映し出され、寝そべりながら身を乗り出していたエースがズサッとベッドの上で座り込んだのがわかった。……うん、これは今晩ひとりでトイレ行きたくないレベルで怖いかもしれない。

とまあ鑑賞したことに若干の後悔を感じていると、追い打ちを掛けるように女の霊が高笑いをあげて画面に詰め寄ってくる。


「だああ!まじやばいだろコレ!」
「予想以上に怖い、ねっ?!」


言い切る前に腕を掴まれたかと思うと素早くベッドの上へと引き摺りあげられ、体育座りをするエースの足の間にスッポリと挟まれた。それと同時に筋肉質な両腕が上半身に巻き付いてきて、ふと右胸に違和感を覚える。

「ちょ、腕当たってる!」

ジトリとエースを見上げて言えば、とてつもなく真剣な眼差しに射抜かれて。


「…まじでどんくらいあんの?」
「今までわたしの胸に対して興味のカケラも無さそうだったくせに突然なんなの?」
「急に気付いたんだって……で?」


どーなんだよ?なんて憎たらしいほどやらしい笑顔で答えを求められた次の瞬間。
皺枯れた声で咆哮する女性が激しく画面を叩き始めた演出に、顔を引き攣らせたエースが先ほどより大きく後ずさった。

結果、背後の壁に頭を強打したらしく部屋の中に鈍い音が響く。


「痛ってえ!」
「へっ、ざまあ!セクハラ紛いなことばっかり言ってるから罰があたったんだよ神様ありがとう!」
「その顔うぜえんだけど!」
「ざまあざまあー」


べろべろべーと顔芸さながらに煽れば、キャラメルコーンを4つ一気に口に押し込まれた。さっきの仕返しのつもりだろうけど余裕ですー。キャラメルコーン信者ナメんな。


「あーまいうー」
「うわ!その顔も腹立つ!」
「へっへっへっ」

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ちょっとべたべたさせすぎた感(´・ω・`)
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