はなし! | ナノ


 chocolate!

「ハッピーバレンタインデー!」
「おっ、ありがとな!」
「えへへー!今年はなまえちゃん特性ロシアントリュフでーす!」


ニコニコと笑顔を浮かべて言ってみたものの、何故か途端に隊長が黙りこんでしまった。
あらら?これは予想外の展開ですよ?
「面白そうじゃねェか!さすがなまえだな!」とか言ってくれるかと思って期待してたはずが、むしろ逆に嫌そうな顔をされている。なんでだ。


「なんでだ、じゃねーだろ!第一ロシアントリュフってなんだよネーミングからして既に怖ェよ!」
「まあその名の通りどれかひとつにハズレが入ってるっていうバラエティ的なノリのトリュフだよね」
「マジでどうしようもねェことばっか考えるなお前は」
「えー?だって普通の貰うよりこっちの方が楽しそうじゃない?そしてちなみにそれ本命チョコだからね!んふふ隊長ラブ!」
「聞いてねェ聞いてねェ」
「むふー!隊長大好きー!」
「………」
「ラーブ!隊長ラーブ!」


……………あ、あれ?
いつもならこのあたりで回し蹴りとかその類のものが出るはずなんだけどな。隊長ったら今日はご機嫌なの?そうなの?だとしたらこの機に目一杯アピールしとかなきゃ損だよね!

そう判断して、絶好のチャンス!と言わんばかりに告白の言葉をぶつけまくっていたのだけれど、やっぱり怒りボルテージが蓄積されていたのかなんなのか。突然グーで思いきり頭を殴りつけられてしまった。いっ、痛い…!


「ううっ!割れる…!割れる割れる!」


ワアワアと叫び散らしながら涙目で隊長を見上げると、あらまあビックリ…。
顔が真っ赤だよ隊長。まるで茹でダコ。まるでりんご。まるでトマト。まるで、あ、はい。しつこいですねごめんなさい。

それにしても隊長…。
もしかしてその反応ってーー、


「わたしの告白に照れてブファ!痛っ!本日二度目の激痛!」
「うるせェ!お前は少し黙ってられねェのか!」
「わかった黙る!黙るからとにかくコレを受け取ってくれませんか隊長!」
「……じゃあ今食う」
「う、うん!食べて食べて!」
「おー。じゃ、いただきます!」


元気良く言った隊長がトリュフをひとつ手に取ると、ひょいっと口の中に放り込む。

溶かして固めるだけのトリュフだから失敗はないと思うけど、それでもやっぱり緊張するなあ…、なんてことを思いながら様子を伺っていると、次の瞬間「うめェ!」と満面の笑顔を向けられてあえなく失神するかと思った。
マジその笑顔やばい…!


「ロシアンとか言うからどんなんかと思えば普通にうめェじゃん!」
「じゃあ当たりを食べたんだね!」
「……そーいや聞き忘れてたけどよ、お前ハズレのトリュフに何入れたんだ?」
「えっ?!」


つい声が引き攣ってしまった。
やばい、かなりやばいぞ。
隊長の顔が一気に般若顔に変わったんだけどどうしたらいいのこの状況…!


「おいコラ、何入れやがったんだよなまえ」
「いやあ…。ちょっと忘れ、」
「言え」
「………」
「5秒以内に言わねェってんなら燃やすぞ」
「ひっ!」


いやいやいや!そんなマジな顔で言わないでよ!対象人物がわたしとなったら本当にやりそうな気がして怖すぎるって!冗談に聞こえないって…!


「…素直に言えば怒らないって約束してくれるなら言う」
「それは内容によるだろ」
「じゃ、じゃあ言わない!」
「5ー」
「言わない!」
「4ー」
「言わない…!」
「3」
「言わな…い」
「2」
「…っ!」
「1」
「…び、」
「び?」
「媚薬…だったりギャアア!やだやだやだ!怒らないでよ!ご、ごめんなさいぃぃ!」


(てめェコラ!恐ろしいもん食わしてんじゃねェよクソなまえ!)
(うわっ!チョコを前にしてクソとか言わないでよ隊長!)
(ンな冷静なツッコミいらねェんだよバカ!)

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設定的にはぽかぽかの二人です。
オチがこんなんですみません(._.)
あわよくばを期待していたヒロインどんまい…!大人のお薬はきっとナースさんが悪戯で渡しちゃったとかですかね( ^∀^)
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