「ほんでもって、ここの接続詞っちゅーのが―――、」


黒板の前に立つ国語教師が接続詞だかなんだかについてとっても熱心に解説してるけど、残念ながらわたしの全神経は窓の外へとフル作動中。
授業なんて全く頭に入ってこない。

でもそれも仕方のないこと…!

だって校庭にひかるが!体育ジャージを着たひかるがいるから!
くうぅっ!っと悶えながら引き続きその姿を目に焼き付ける。

しかし次の瞬間、ふと感じたのは通路側からの威圧感。


「………」

「………」


えっと……、うん。
先生が真横に立っていらっしゃる。


「なあ、みょうじー?お前さっきっから俺の話なーんも聞いてへんかったやろ?」

「え、いやあ、そんなことは…。」

「なにが"いやあ"、や!板書もせんと窓の外ばっっっか見とるやないか!窓の外にどないな珍しいもんがおんのや!ツチノコか!ツチノコなんか!」

「なっ…!」


ツチノコとひかるを一緒にするなんてふざけてるのかお前は…!と言ってやりたいところだけれど、チキンなわたしはそんなこと言えたもんじゃないのでジロリと睨むだけに抑える。


「なあせんせー、なまえは愛しの財前君を見てただけやと思うんで許したってくださいよー」

「ちょ、マイちゃん…!!」


隣の席のマイちゃんがそんなことを言ったもんだから、先生の額にぴきりとお怒りマークが追加される。
ちょ、マイちゃんんん!?


「ほーう、財前か。確かにおるなあ、二年の体育はサッカーやもんな…って、あいつ今怪我したんとちゃう?」

「え?…えええっ!」


急いで校庭を見れば、本当にひかるが怪我をしているではないか。
膝小僧から血が流れ出ているのが見える。
えっ、しかも血の量結構多くない…?!


「ちょ、ひかるううう!」

「おいこらみょうじ!おま、うっさいわ!」

「ひかる…!今から保健室集合!歩ける?!大丈夫?!」


先生のお言葉を総スルーして大声でひかるに呼びかければ、ぽかんとした表情を浮かべながらも小さく頷いたのがはっきりと見えた。
ようし、そうと決まればわたしも保健室へ急がなければ!


「先生!わたしちょっとお腹が痛いので保健室に行ってきます!」

「嘘が丸見えすぎやろお前!っておいこらみょうじ!待たんかい――、」



* * *



「ひかる…!」

「はいはい。ちゃんと居りますよ」


保健室に着くとそこには既にひかるの姿があった。
先生は職員室にでも行っているのかポツンと一人椅子に座っていたので、速足で駆け寄ればそこは血にまみれまくっていて思わず顔を歪めてしまう。

だって、血、やばい!


「うげえ…。」

「露骨に嫌そうな顔せんでくださいよ」

「いや、でもこれやばくない?どうしてこうなったの?」


眉間にぐっと皺を寄せながら聞けば、ゴールんとこに変な金具みたいなん出とったんすわ、と一言。


「水で洗うとこまでは終わってますんで」


あとは頼んでええんすよね?
そう言ってぐいっと足が差し出される。


本人は顔に出さないけど随分痛みがありそうだし、なるべく慎重に手当てしてあげないとなあ…。
そんなことを考えながら、消毒液を染み込ませた脱脂綿で傷口をつつく。


「…なあ、なまえ先輩」

「ん?」

「先輩めっちゃ目立っとりましたよ」

「えっ」


目立ってた?わたしが?
確かにあれだけ騒いでいたから、教室内では大分目立ってたと思う。
だけど校庭にいたひかるにその光景が見えるはずもないし…。

わけがわからなくて首をかしげると、呆れた表情を浮かべるひかる。
うわああ、呆れてるひかるもかっこいい!


「アホな先輩は気付かんかったかもしれないすけど、二階の窓からあんな大声で叫び散らしたらそら注目集めますわ。他の教室の人らビックリして外見とったで」

「ええっ、なにそれ恥ずかしい!」

「俺の方が恥ずいっすわ。自分の名前絶叫されとんのやもん」

…ああ、まあ確かに。
あの時はなりふり構わずだったからなあ。


「まあ愛故にだよね」

「ほーん」

「ほーんって!相変わらず興味皆無かひかるめ!」


わたしの愛を粗末に流し捨てたひかるにはお仕置きだ!と、脱脂綿をぐりっと軽く傷口に押しつけてやった。ら、だいぶ効果が抜群だった。


「いっ…!な、にすんねん!」

「え、あっ、ごめん…!ちょ、泣かないでひかる!」

「泣いてへんすわ」


軽く涙目になっているひかるにすぱん!と頭を叩かれてしまった。
ああ、やっぱり痛いんだねこの怪我。
軽く押しただけでもひかるを涙目にさせる位には致命傷らしい。


「え、えっと…」


ちらり、とひかるを伺い見ればジロリと鋭い視線に射抜かれる。
うげえ、これはやばいやーつだ。
危険を感じてひかるから距離を取ろうとすれば、それを許さないとでもいうように鷲掴まれるわたしの手首。


絶 体 絶 命 !


「…なあ、先輩が後輩虐めたらあかんですやんなあ?」

「本当すみません許して下さい」

「はい許しませんー」

「え、ひか……、ちょ、ぎゃあああああ!」



(なあ白石…。)

(ど、どないしてん!顔真っ青やで謙也…!)

(ちょ、なまえの腕見てみいや!なんやのあれ!むっちゃグロいんやけど…!)

(なんやあれ…、噛み跡?)

(噛み跡て、あいつワンコなんて飼っとった?)

(さあ…?最近飼い始めたんかな?)


((ひ、ひかるに噛まれたなんて口が裂けても言えない…。))

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はい、財前くんに噛まれたいです…!
ぎゅううううっと。手加減なさそうなところがまた堪らん…!!!
なんて考えながら書かせて頂きました。

財前きゅんのS加減に骨抜きです(^ ^)
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