財前きゅんと撮影

「なあなあ、なまえちゃん!お願いがあるんやけど…!」


パチンと手を合わせてこちらを伺う彼女は同じクラスの彩ちゃん。
くりっとした大きな瞳がチャームポイントの可愛らしい女の子である。

それにしても、突然改まったりしてどうしたんだろう?


「お願い?」

「おん!あんな、なまえちゃんに写真を頼みたいねん!」


そう声を荒げる彩ちゃんに「写真?」とオウム返しすれば、「そう、写真!」ともう一度オウム返しをお見舞いされてしまった。
いやでも、写真ってもしかして……、


「わたしの?」


恐る恐るそう問いかけてみれば、割と真剣な表情で「ちゃう」と否定される始末。
まあわかってたけど!わかってたけど今のはちょっと寂しかったよ、彩ちゃん…!


「そうやなくてテニス部や、男子テニス部!」

「え……、あっ!ま、まさか彩ちゃんてばひかるの写真が欲し、」

「ああもう、ちゃうくて!財前くんだけやのうて男子テニス部のレギュラーみなさんの写真がほしいねん!」

「みんなのって…え、一氏とか謙也のもいるの?まじ?」

わたしだったら絶対いらない!なんて眉を潜めて言えば、「うちかて私情でほしいんとちゃうよ!」と焦ったように声を上げる彩ちゃん。
おおう、こんなに焦られるなんてドンマイだな一氏、謙也…!
ニヤリとほくそ笑みつつそんなことを考えていると、「こ、これの為やねん」と彩ちゃんからとある紙が差し出された。

ええっと…?


「校内新聞、の原稿?」

「おん、次の校内新聞で男子テニス部取り上げよう思て!」

「あ、そっか!彩ちゃん新聞部だったもんね!」

「せやねん!そんでな、一応オサムちゃんには許可取ってあるんやけどやっぱり記事の見栄え的には写真もほしいところやん?」

「うん、まあたしかに…!」

「やんな!なっ!でまあ、そこでなまえちゃんにはこれをお願いしたいねん!」


そう言った彩ちゃんがずいっと差し出したのはとてもお高そうなカメラ。
そのあまりに高価なアイテムを前に思わず目が点になる。
ちょ、え、これをわたしが使うとか怖すぎる…!
我がテニス部には四天一の破壊神がいるんだよ…!
万が一壊したりしたら笑えない!


「わ、悪いことは言わない!これは彩ちゃん達新聞部の人がやった方がいい!絶対!」

「アカン!」

「え、」

「うちらが撮るよりなまえちゃんが撮ったほうが自然体のみんなが撮れるやろ!ちなみに新聞部が求めるものは練習中の個人ショット及び、それぞれのオフショットの2タイプやから!頼むで、なまえちゃん…!」

「ちょ、ちょっと彩ちゃん!?」


半ば無理やり持たされたそれを慎重に支えながら彩ちゃんの名を呼ぶも、逃げるように去っていく彼女はもはや聞く耳持たず、である。
最初の謙虚な姿勢は何処へいったんですか、ほんと…!

そんな心境の中、今一度手元にあるお高そうなカメラに視線をやり、そして小さくため息が溢れ落ちた。


「まじか彩ちゃん…。」



* * *



「…という怒涛の出来事がありまして、今日のわたしはカメラマンの役職を全うするんでご協力よろしく!」


ひらひらと手を振りながらその旨を告げれば、一様にパチクリと瞬きを繰り返したレギュラー陣一同。
とりあえず今この瞬間に一枚目のシャッターを切ったわたしはなかなかのファインプレイだったと自信をもって言える。


そんな記念すべき一枚目のショットはひかるのキョトン顔です、はい…!



(うわ、なに撮ってんすかなまえ先輩)

(むふふ、ひかるのキョトン顔が可愛くてつい…!)

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キャラが出てこなくてすみません…!
完璧に前振りの回になってしまいました;;;
次回、撮影会です!(笑)
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