ぽかぽか | ナノ


本日の天気は快晴、加えて風も穏やか。
そんな最高のコンディションの中、甲板で最も日当たりのいいポジションに座り込んでいるわけだけど、両手には大量の手配書を握りしめている。


「うーん、やっぱりこの人かな」

「なにが」

「あっ、おはよう隊長!」

「おう、おはよう」


大きい欠伸をしながら挨拶を返してくれる隊長がとてもかっこいい。
わたし的に寝起きの隊長って膨大な色気出てると思うんだよね…!
よーし、今度夜這いでもしてみようかな。


「…今何か良からぬことを考えただろ」

「ま、まさか!」

「嘘つけ!お前は考えてることが全部顔に漏れ出てんだよ」

「うええ、なんかそれ恥ずかしい!つまりわたしが隊長を好きな気持ちなんかも漏れ出しててみんなに見られてるって訳でしょ?」


キャー、照れる!なんて頬を赤らめる。が、それを見た隊長は大げさに顔を引き攣らせた直後、スッとわたしから視線を逸らした。
んもう、恥ずかしがり屋さんなんだから!


「…で?結局それ何してんだ?」

「あ、これ?」


隊長が指さしているのは、わたしが持っている大量の手配書。
そして、目の前に並べられているそのうちの数枚。
今のところ、3枚だ。


「あのね、これはわたしが会ってみたい人ランキング!」

「へえ、ランキングか…。」


てっきり「手配書で遊ぶな!」って怒られるものと思ってたけど、意外と気にしないみたいで安心した。
むしろ興味深そうに、じーっと3枚の手配書を眺めている。
とりあえずその様子を静かに見つめていると、不意に隊長の視線がわたしへと移ってきた。


「1位はこいつか?」

「うん、そう!麦わらのルフィ!」

「なんでまたこいつが1位なんだよ?」

「んー…、強いて理由をつけるなら隊長に似てるから、かな」

「似てる?」

「噂で聞いた話によるとね、ルフィ君ってすっごく仲間思いで大食いで喧嘩が強いんだって!それにこの笑った顔なんてまるで太陽みたいじゃない?なんだか隊長と似てるよね!」

「………。」


一気にまくし立てたわたしを目を点にして見ている隊長。
そして次の瞬間、フッともの凄く嬉しそうな笑顔を向けられたものだから、心臓が激しく脈打った。じわり、じわりと頬が熱くなる。

わ、わ、わわわわっ!
今の笑顔二百点満点だよ…!
悩殺力最大の笑顔をありがとう!


「……さすがなまえだな」

「ど、どーゆうこと?」


突然の褒め言葉に、ぽんぽんぽんと頭上にハテナマークが浮上する。なんか誉められてるみたいだけど…?
不思議に思って隊長を見つめていると、ニッと悪戯な笑顔を返された。


「ルフィは正真正銘俺の弟だ」

「……………………えっ?」

「みっつ下の弟なんだよ」

「…え、ええええええ?!」


なっ、なにそれ…!?甲板中にわたしの驚愕の声が響き渡り、離れたところでトランプをしていたクルー達にうるせえ!なんて怒られたけどそれどころじゃない!
だ、だって弟って!弟って…!


「これだけ長い間隊長と一緒にいたのにそんな話初めて聞いた!」

「そうだったか?」

「そうだよ!しかもわたしと同い年とは…。ルフィくん羨ましい!!!」

「うるせェ!お前声でけェんだよ」

「あっ、しかも兄弟ということはだよ?一緒にお風呂に入ったり一日中遊んだり同じ布団で寝たり…、美味しすぎる!!!」

「……で、2位は死の外科医か」

「え、ちょっ…!」


ば、ばっさり話題チェンジされた!
弟くんネタでもっと盛り上がりたかったのに…!まあでもルフィ君に会えた時、直接隊長のことをいっぱい話してもらおう。
代わりにわたしもルフィ君の知らない隊長のことをいっぱい話してあげるんだ!うんうん、楽しみ…!

だからとりあえず今は、隊長が手にしている2枚目の手配書に意識を移すことにする。


「そうそう、2位は死の外科医さん」

「これお前顔で選んだろ」

「えっ?!な、何言ってんの隊長ってば!」


そう急いで否定をしたけれど、確かにこの手の顔はドストライクです。
隊長並のこの色気には正直ぐっとくるものがある。
でも決してそういう理由だけで選んだんじゃないんだよ!


「この一味にはね、おっきくて喋れる白くまがいるらしいの!」

「喋れる白くまァ?」

「うん!その子に会ってみたくて!」

「へえ…!」


若干目をキラキラさせているところを見ると、きっと隊長もその白くまに会ってみたいんだと思う。
今度目撃情報があったら一緒に探しに行くのついてきてもらおーっと!


「………。」


そして隊長が三枚目の手配書を手にしたかと思うと、何故か突然黙り込んでしまった。
あれ、なんかまずかったかな…?
変な雰囲気が漂う中、控えめに隊長の顔をのぞき込んでみる。


「隊長?」

「……なまえ、こいつはランキングから外しとけ」

「な、なんで?」

「危ねェんだよ、いろんな意味で」


そう言い放った隊長の表情はとてつもなく険しくて、本当に危ない人なんだろうなと思う。
隊長の手中にある手配書には、ピンクのほわほわをくっつけている男の人が写っていて、名前はドンキホーテ・ドフラミンゴと書いてある。

そっか、そんなに危ない人だったんだ…。


「ちょっとお馬鹿そうな雰囲気出てるから仲良くなれそうだと思ってた」

「あのなァ…、こいつ七武海だぞ?」

「えっ!まじか!」

「とにかくこいつを見かけても絶対に近寄るなよ。わかったな!」

「う、うん!そんなに心配しなくてもわたしの中での1番は隊長だから安心し、痛っ!」


ビシッとチョップを落とされ呆気なく後ろに倒れる。
なぜいつも愛を伝える場面で攻撃されるんだろう…!
告白拒否されるなんて中々経験できないことだよね。


「んもう、隊長ったらヤキモチ?」

「今のやりとりのどこに嫉妬の要素があったのか俺には全くわかんねェよ!」

「えー、わたしが麦わらくんとか外科医さんとかピンクさん相手に騒いでるからそこらへんでヤキモチ妬いちゃったかなって!」

「心配不要だアホ」

「えー、強がらなくてもいいのに」


うふふと頬を緩めてだらしなく笑うわたしをよそに手配書をペラペラと眺める隊長。
何してるのかなー、と黙って隊長の動作を見つめているとパサッと2枚の手配書が目の前に放り出された。


「ええっと…ジュエリー・ボニー、ニコ・ロビン?」

「俺はこいつらだな」

「会いたい人ランキング?」

「あァ」

「…ちなみに理由は?」

「色気」

「…………!」


い、今なら土にめり込める…!
沈んでいける気がする…!
た、隊長が女の人に会いたいとか言い出したよ!
いや、わたしもさっきまで言ってたんだけど!
この流れだとむしろヤキモチ妬かされてるのわたしの方じゃないか。
まさに形勢逆転!そ、それにしてもショックすぎる……。


「さっきまでのテンションはどうしたよ」

「だって…!隊長ー!」


涙を浮かべながらガバっと隊長の腰にしがみつけば、やめろ!と怒鳴られ頭をぐぐぐっと押されてしまった。
でもわたし離れないから!
ここは意地でも離れない!
ムキになってむぎゅーっと抱きついていると、剥がすことを諦めたのか押し返す手の力が弱まった。


「離せって」

「やだやだやだ!隊長がお姉さん方のところ行くのなんて阻止してやる!」

「はあ?」

「ぜーったい阻止!」

「………ったく、冗談に決まってんだろバカなまえ」

「…え?」

「冗談」

「…ジョ、ジョーダン?」

「そうだ、適当に女の手配書探し出しただけ」

「な、なんでそんなこと…!」

「さっき俺のことを勝手に妬いてる設定にした仕返しだコラ」

「えー!おかげでわたし今すごいジェラシーの塊だったよ!」

「あァ、見てるこっちが怖かった」

「………」

「………」

「「…ハァ」」


そんなこんなで甲板の端で互いに深い溜め息をつきながらうなだれるわたしたちは、端から見たらきっと異様な光景だったに違いない。


(…隊長ってたまに心臓に悪い冗談言うよね)

(言った後、毎回なまえの反応に驚かされてるけどな)

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白ひげの船に乗っといてドフラミンゴを知らんとはいかなることか!って話ですよね…!
毎回すみません、どこか話の詰めが甘くて…!
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