新しい島に到着すると、クルー達の多くが島内へと出掛けて行った。
船の中はほぼ空っぽ状態。運悪く船番当番に当たっていたわたしは、一人甲板の中央で大の字に寝転がっているというわけだ。
「暇だなー、早く誰か帰って来ないかなー」
独り言を呟きながら、ぼけーっと空を眺めてみる。
すると、あるひとつの雲が目に止まった。
パイナップルみたいな形…。
「マルコ隊長は何してるのかなー」
ぽつりと零して、更なる雲へと視線を移す。
おお、あの雲はハートの形に見える。
そういやマイスウィートダーリンはいつ帰ってくるんだろう……ていうか、スウィートダーリンってなんかすっごく良い響き!
「むふふ!」
「そういう厭らしい笑い方しかできねェのかお前は」
「いやあ、隊長のことが好きすぎて幻聴まで聞こえる…。」
ここにいるはずのない隊長の声が聞こえた気がして、つい頬が緩む。
幻聴でもわたしを貶している辺りさすが隊長!きゃ!なんてジタバタ悶えていると、随分な力加減でお尻を蹴飛ばされて驚いた。
「痛っ!えっ、ちょ、だれ?!」
もしや敵襲か!と、威嚇するように後ろを振り向く。
けれどそこに立っていた人物を視界に入れるや否や、先ほどの威嚇は綺麗サッパリ消え果て、代わりにいくつものハテナマークが浮上した。
「どうしたの隊長?島見て回らないの?」
「ログが溜まるまでまだ2〜3日あるらしいからな」
「あっ、じゃあ明日一緒にまわろうよ!ていうかそのために今日行くのやめた感じ?」
「んなわけあるか!」
両手をグーにして、頭の両サイドをぐりぐりと痛めつけられる。
そんな風に照れ隠ししちゃうところも可愛いなあ、なんて。
「隊長萌え!」
「やめろ!」
最後にぼかりと拳骨を落とすと、甲板に寝転がる隊長。
各言うわたしも、腫れ上がった頭部をさすりながら同じく隣へと寝転がった。
「………」
「ねえ隊長、しりとりしよっか」
「しねえ。眠ィんだよ」
「ヨット」
「勝手に始めてんじゃねェ!」
我ながら自然な流れで始められたと思うんだけど、すかさずチョップをくらわせてきた。痛い。地味に痛かった。
「放っといたら隊長寝ちゃうじゃん」
「寝たっていいだろーが」
「やだ!隊長が寝たらまた暇になる!」
「勝手になってろ、バカなまえ」
ぬう。本当隊長ってツンデレだな…。むしろ最近デレの部分が全く見えてこないからツンツンになりつつあるんだけど。
んもう、隊長がツンを極めるならわたしがデレを担当しようかな!
うん、なかなかのナイスアイディア!
でもとりあえず今は隊長に寝られちゃ困る。暇になるのは嫌だ。
「わたしからね!しりとり!」
「…」
「しりとり!」
「…」
「しーりーとーり!」
「…」
「しーりーと「りんご!」
呪い殺すような勢いで睨みつけてくる隊長。お、おっかない…!でもりんごってかわいい。その睨みとりんごのギャップ、とってもかわいい!
「ごま」
「マンゴー」
「ゴ?伸ばしのあとに出てくるオ?」
「ゴ」
「ゴム!」
「虫かご」
「…ごほうび!」
「ビンゴ」
「また"ご"!?」
「付き合ってやってんだから文句言うな」
「……ご、ご、ゴジラ!」
「落語」
「……」
なっ、なんて古典的なイジワル…!
そりゃあわたしが無理矢理付き合わせたのが悪いけど、隊長ったら大人気なさすぎるでしょ!しかも"ご"をチョイスしちゃうところがまた一層大人気ない。
さっきまであんなに怖い顔で睨んでいたくせに、今はざまあみろとでも言いたげに口の端を吊り上げてるし。……超くやしいいい!
「なんだよ終わりか?」
「語尾に"ご"をつけるの禁止令を隊長に課す!ってことでもう"ご"攻め禁止!」
「はいはい」
「じゃあ改めて……、お酒!」
「毛糸」
「鳥!」
「リゾット」
+ + +
このあと徹底された"と"攻めを受け、もう二度と隊長を無理矢理しりとりに誘わないことを決めた。
(今度はマジカルバナナね!)
(お前ほんと面倒くせェな)
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書いてから気付きましたが、白ひげの見張り番とかって隊別で役割分担されてそうですよね。
あれだけいて個人に割り当てられるって中々ですよね…!!
初歩的ミスごめんなさい;;