青春エメラルド | ナノ


今日は生憎の雨なので、全校集会を体育館でやるらしい。
まあ全校集会といっても中学部の時とたいして変わらず、ほぼほぼ校長先生のジョーク話で幕を閉じるパターンだ。校長の話ってば長いから足疲れるんだよなあ…。
わざわざ一か所に集めなくても校内放送でよくない?


そんな憂鬱な思いを抱えながら渋々クラスの整列位置へと向かう。
並び順は特に指定されていないので仲のいい友人たちと前後になれば憂鬱な気持ちがちょっと軽くなった。しかも運良く列の後ろの方陣取れたしラッキー!


「おー、みょうじちゃんやん」


前後の友人たちとワイワイお喋りしていると、ふと名前を呼ばれたので声の方へとくるりと振り向く。
すると、右隣に整列する二年生の列からヒラヒラと手を振る見知ったイケメンさん。


「へ、あっ!…ほ、宝林寺先輩!」

「……えっ」


目を丸くしてキョトンとする先輩を前に嫌な汗が流れる。
あ、あれ?宝林寺先輩で合ってるよね?この前指摘されたからちゃんと覚えたつもりだったんだけど…。
段々と不安になってきて窺うように先輩を見れば一歩、また一歩と近づいてきてふわりと頭を撫でられた。

……って、ええっ?!


「せ、せんぱい!?」

「アカン、ようやっと俺の名前覚えてくれて嬉しくてつい」


ふにゃり。本当に嬉しそうに笑う宝林寺先輩。
その間も引き続きふわふわと頭を撫でられて、思わず顔が熱くなる。
そ、そりゃあ爽やかイケメンな宝林寺先輩に頭撫でられたら赤面するでしょ!

……だけど理由はそれだけじゃなくて。

頭を撫でられた瞬間、この前の屋上での財前先輩とのことを思い出してしまった。
や、うん。だってああいう感じ慣れてなかったし。
今まで頭なんて撫でられたことなかったからつい動揺しただけで…。うん。
そうだよ、ただそれだけのことじゃん…!

ぎゅっと目を瞑って自分に言い聞かせるようにすれば、不意にキィンとマイクのスイッチを入れた音が耳へと届く。
それと同時に宝林寺先輩は隣の自分のクラスの列へと戻り、ゴホンという校長の咳払いを合図に全校集会が始まった。


だけど、なんだろう。

ブー
ブー
ブー
ブー


さっきからポケットに入れてあるスマホがけたたましく震えている。
このバイブの感じはアレだ。ラインの通知だ。


「(なかなか止まらないな…。)」


一向に落ち着く気配のない通知に、仕方なくポケットへと手を伸ばす。
そのまま先生に見つからないようにスマホの画面に目を向ければ、……なんだこりゃ。


今もなお連投されてくるスタンプにぎょっと目を見開く。
ネコのゆるキャラがジト目でこちらを見つめるスタンプが地味に怖い。
ちょ、待って!ちゃんと見てる!見てますから!落ち着けよ財前先輩…!

スマホ片手にキョロキョロと辺りを見渡すと、すぐにお目当ての人物を見つけた。

隣の二年生の列の最後尾。
かったるそうにスマホをいじる財前先輩に、周りの女子たちが熱視線を向けている。


「…ちょっとまじでどうしたの財前先輩」


既読が付いてわたしが気付いていることもわかってるはずなのに引き続き送られてくるスタンプの嵐。思わずぽつりと呟けば、列へは戻ったもののほぼ隣に立っていた宝林寺先輩が「どしたん?」と小さく首を傾げた。


「や、あの…。」


なんて言えばいいのか口篭もっていると、ふと通知を知らせるバイブ音が止んだ。
不思議に思って今一度画面へと目をやる。
するとそこにはさっきまでのジト目のスタンプではなく、一行の短い文章。


<こっち来て>


「え…、」


ぽかんとしていると、続けてもうひとつ。


<宝林寺の横のがええ?>


その一言に、さっき以上にぽかんと放心。
な、なんだろう。ほんとどうしたの…?


「みょうじちゃん?」

「あ…、えっと、なんでもないです!わたしちょっと後ろ下がりますね!」


へらりと笑顔を浮かべて言えば、直後パッと後方を振り向いた宝林寺先輩が何かを悟ったように苦笑を浮かべてわたしへと向き直った。


「やってもた。光にヤキモチ妬かせてしもたんか」

「え、ええっ?!ヤキモチ?!」

「え、どう考えてもそうやんか!めっちゃ不機嫌そうにこっち見とるし」


そう言われてもう一度財前先輩の方を見れば、ムスっとした表情を浮かべながらおいでおいでと手招きをされる。
その仕草が自分に向けられていると理解すると同時に、再びカッと顔が熱くなった。


「おいで、やって」

「で、ですね…。」


なんだか恥ずかしい。宝林寺先輩に小さく頭を下げて「いってきます」と呟くと、そのまま小走りで財前先輩のいる最後尾位置へと下がり、自分のクラスの列に並び直す。

そして、チラリ。

財前先輩を盗み見れば、バッチリ視線が交わった。


「あの、財前先輩」

「…なん」

「ちゃんと来ましたよ、財前先輩のとこ」

「……おん」

「嬉しいですか?」

「はあ?」

「…ヤキモチ、妬いてたんですか?」

「ちゃうわアホ」


自分から呼んだくせに居心地悪そうにしているのがおもしろくて、ちょっと調子に乗ってみたらパシンと頭を叩かれた。
あれ?なんだ、いつもの財前先輩じゃん。

普段と変わらない先輩の態度に安堵の息を溢しつつ「痛いですー」と笑いながら抗議すれば、つい数秒前にわたしを叩いた左手がポンと頭に乗せられて。

なにか言葉を発する前に、その手でくしゃりと前髪を撫ぜられた。


「っ、!」


えっ、えっ、えっ。
………ええええ。
なんだその優しい触れ方…!


(なん、顔真っ赤やんみょうじ)
(…笑わないでください)
(笑ってへんし)
(ど、どの口が言いますか!ニヤニヤしてるくせに!)


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なにも描写しませんでしたが、この間ずっと校長しゃべり続けてます(´-ω-`)(笑)
まあ四天宝寺の全校集会は和気あいあいとしてそうなので多少のおしゃべりも許されているというご都合設定をさせて頂きましたすみません!

頭撫でられるのって地味に恥ずかしいですよね!照れますよね…!
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