「だああ!俺のマークばっか付くんじゃねェよロー!」
「仕方ねーだろお前のデカさに張り合える奴が他にいねーんだ」
「退け、っての…!まじで!」
「点取りたきゃ振り切ってみろよ」
「くっそ…!」


……あ、あれ?
仲が良い、んだよね?


「バッカ!ダンクなんかぜってー打たせねえぞ!」
「チッ、ジャマくせえ」
「もらった!よっしゃカウンター行こう!」


試合が始まってからというもの、ローくんとエースがひたすらに小競り合っている。しかもキッドの言うとおり、あのかまちょなエースがぐったりするくらい構い倒されてるように見えるから驚愕だ。きっとあの大袈裟すぎる反応が面白いんだろうなー。


「でもってローくん超うまい」
「ね…。想像の遥か上いってる…。」


ぽつりぽつり呟くネネを盗み見れば、完全に目がハートだ。いいのか。そばに推しメンキッドがいるぞ。ハチマキ交換した相手がいるんだぞ!……とは思うけど、そうなるのも仕方ないくらいローくんのバスケセンスがすごい。

なんたってあの運動神経の塊みたいなエースと互角にやりあっちゃってるんだもんなあ…。とか思いつつ試合の行方を目で追っていると、丁度ローくんの手元へとボールが回った。直後、ニヤリと悪戯な笑みを浮かべたかと思えば、流れるような動作でシュートが放たれたではないか。

でも待って、そこって…!


「センターラインからのシュート!?」


思わず声にするも、放たれたボールはまるで吸い込まれるようにリングを潜りネットを揺らす。


――体育館内が、一瞬の静寂に包まれた。

続けてボールが床に落ち、バウンド音が数回響く。


するとそこでようやく観戦勢が我に返ったらしく、堰を切ったように沸き立つ悲鳴、歓声、そしてもう一回悲鳴。とにかく女子たちのシャウトがものっそい…!かく言うわたしも、その神プレイに心を打たれた中のひとりだった。


「ろっ、ローくんかっこいい!がんばれー!」


思わず周りの子に紛れて叫べば、隣に立つキッドから渋い顔で一瞥されたから居た堪れない。いくらなんでもそんな白けた目で見なくてもいいと思うんだけど。


「だ、だってしょうがないじゃん…。今のはどう考えてもかっこいいよ!スーパープレイだよ!」
「何も言ってねえだろ」
「目が言ってる!」
「ね、ねえなまえ!」
「ん?」


キッドに抗議していると、逆側からネネに肩を叩かれた。


「前、前!」
「まえ?……んんっ?」


言われたとおりコートの方を見れば、なぜかボールをドリブルしながらダッシュで向かってくるエース。…一応言っておくとすれば、ゴールはこっちじゃない。むしろ逆方面だ。

今まで散々ゴールしてたからわかってるとは思うけど、とりあえず「ゴールはあっちだよ」と指で示してみる。


「エース!ゴールそっちじゃねえよ!」
「ボール持ってどこ行ってんだ!」
「戻れエース…!」


当たり前に、チームメイトからも困惑の声があがる。
すると、サイドラインの内側まで来たところでようやく足を止めたエースが荒く息を乱しながら、勢いよくわたし達のいる方を指差した。そして、小さく呟く。

すぐ傍にいたクラスの女子たちが一斉に騒めきだったことでハッキリとは聞こえなかったけど、その時見えた口の動きも合わせればきっと間違いない。


「俺の応援だけしとけ」


そう言ったであろうエースにとりあえず頷いて返すと、まだ少し不満そうではあったものの、ドリブルを再開させようとしたので慌ててストップをかける。


「エース!トラベリング!」


動けるのはあと一歩までだよ、それ以上歩いたら相手ボールになっちゃうよ、パス回しなよ、と幾つかの意味を込めて言ったはずだった。

なのにまさか、この場からシュートを打とうという判断に至るなんて…!


「ちょ、エース?!」
「見てろ、入るから」


そう言うと、まるで砲丸投げのようなモーションでボールを放り投げた。こんな助走もないがむしゃらな投げ方、普通の人なら100%入らないに決まってる。
でも、目の前にいるのはエースだ。普通じゃない。

何度も言うけど、ほんと運動神経の塊だからこの人!尋常じゃないから…!


そんな思惑通り、エースの手から離れたボールはリングの奥のバックボードへと当たり、パスっといい音を立ててネットを潜る。
…いやでも予想してたとは言っても凄すぎる。鳥肌立った…!


「ほらな?入ったろ!」
「ほ、ほんと運動オバケ!」
「誉め言葉としてもらっとく!」


湧き上がる歓声の中、満面の笑顔で言ったエースが機嫌よくローくんの元へ駆けていく。


「見たかロー!センターラインより奥だったぞ!」
「別に張り合ってねえよ」
「ンだと!」
「重要なのは過程じゃねえ。結果だろーが」
「…おもしれェ」
「せいぜいバテねーようにな」
「そりゃあこっちのセリフだ!」


そんなこんなで火花を散らすふたりが突如始めた怒涛のダンク合戦。
巻き込まれる形になっているチームメイトの彼らと、ひたすらダンクを撃ち込まれる両サイドのリングがただただ可哀そうに見えて仕方なかった。


「あのふたり球技大会のクオリティ超えてません?」
「まあ、あいつらだしな」

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参戦させなかったけどキッドもバスケ超上手そう(´・ω・`)
ゴール下でキッドがディフェンスしてたらさぞかし迫力あると思います!
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