学年一のモテ男と名高い財前くんの隣席になって早数日。
わたしにはちょっとした悩みが出来てしまった。
それというのも「窓際の最後尾」というこの席の位置に問題があるのだと思う。
チカッ
チカッ
「(ま、まぶしい…。)」
そう、正にこれが今わたしの抱いている悩みそのもので。
窓から差し込む太陽の光をチカチカと反射させているその悩みの種を今一度チロりと盗み見る。
……うん、やっぱり眩しい。地味に眩しい。
「……なん?」
「え?」
「え?やなくて。そないにガン見されると嫌でも気になるんやけど」
じとりとこちらを見据える財前くんからは「用があるなら早く言え」の意がひしひしと伝わってくる。
いやでも、これ素直に言ってもいいものなの?
あなたのピアスが地味に眩しいんです、だなんて。
………や、ダメだダメだ!
嫌味がましいことこの上ない気がする!
「ごめん、なんでもないから気にしな、」
「言えや」
「え、」
「気になるからはよ言え」
「っ、ちょ…!」
な、なにそのデコピン構えの左手…!
攻撃態勢へと突入した財前くんを前に目を見開けば、「10−、9−、」と気だるそうな声で意味深なカウントまで始めたではないか。
うげ、ちょっと待ってって…!
「あんまり騒ぐと先生に怒られるよ財前くん!」
暗に「デコピンはやめようよ!」と訴えてみる。
というより、あわよくばこの話自体を流してほしい。
流石にピアス云々については個人の自由だし、文句なんか言えないって…!
なんて思っていれば「ほなみょうじが口割るまでガン見し返したるわ」だなんてとんでもないことを宣言された。
なんだその女子殺しな必殺技…!
「………」
「………」
「……え、ちょ、ストップ財前くん」
「嫌やったらはよ言って」
「えええ…、」
「早う」
「そんなに気になる?」
「気になる言うてるやろ、何遍も言わすなや」
ずばっと即答した財前くんを前に、うっ!と言葉が詰まる。
同時に、財前くんレベルの洗練されたイケメンにガン見されるとか激しく息が詰まるんですけど。どうしたらいいんですかこれ。
もう逃れようがない気さえしてきた。
…………。
………も、もういいか。
この際言っちゃうか。
本人が言えって言ってるんだし問題ないよね。
段々と考えるのが面倒になってきて、ふわふわとそんな結論に辿り着く。
そうと決まれば早いもので遠慮気味に小さく彼の耳元を指した。
「あの、それ」
「どれ」
「いや、その、財前くんのピアスがね?」
「ピアス?」
「うん。ピアスが太陽の光を反射してちょこーっと眩しいなと思いまして」
「……で?」
「で、それが眩しいなーって見てただけ」
「………」
すべてを話せば聞き終えた財前くんがものっそい「それだけ?」感を漂わせながら、自らの耳元にゆっくり左手を運んで。
一方隣でその動作を見ていたわたしは「財前くんが気を使ってピアスを外そうとしてくれてる!」だなんて都合のいい解釈を繰り広げ、思わずその左手をがしりと掴んでしまった。
「……なん?」
「え、や、わたしが眩しいとか言ったからピアス外してくれようとしてるのかなって思って…、でもそれは流石に申し訳ないから、」
「いや、俺別に外そうなんてしてへんけど」
「…へ?」
「むしろなんでみょうじのために態々外してやらなあかんねん」
そんな財前くんの一言を聞いて一気にやるせない気持ちになった。
うん、そうだよね。財前くんはこういう人だったよ。わたしったら無駄に深読みしすぎてたわ。非常に残念すぎる。
そんなこんなで遠い目をしながら落胆していれば、隣で頬杖を着いていた財前くんがふとこちらに視線を流して「ええこと思いついてもうたわ」なんて小さく一言。
……果たして財前君の言う「いいこと」は、本当にいいことなんだろうか。
(い、いいこと?)
(おん、こっちにもう一個ピアスの穴増やそかな思て)
(なっ…!わたしへの嫌がらせだよね、それ!)
(ちゃうちゃう、そんなんちゃうに決まっとるやんか)
(財前くん、棒読み。かなり棒読みになってるんですけど!)
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懺悔のお時間でございます(;O;)
ピアスの反射なんて一切眩しくないですよね…;;
すみません、このお話を書きたいだけに現実味をスルーしてしまいました!(汗)
ただそんな状況がありえたとしたら、財前くんにはそれさえ逆手にとって更なる意地悪をしてほしいです…!
※一応解説しておきますと、
(教卓側)
窓│ ヒロイン 財前くん
な位置関係です。(上手いこと文中で説明できず申し訳ありません;)