「味ってどう違うの?」

首筋を隠す髪を退けるべくエースの右手がそろりそろりと静かに動く。それが無性にくすぐったくて誤魔化すように喋りかければ「味?」と不思議そうに呟いてゆっくりと手の動きが止まった。

なので普段から疑問に思っていたことを、ここぞとばかりに聞いてみることにする。


「3人ともバラバラのところから吸うけどそんなに違うもんなの?」
「んー、例えば同じいちごアイスでもかき氷とシャーベットとソフトクリームじゃ味が違ぇだろ?それと同じようなモンだ」
「わかるようなわからないような…。」
「今の例えで言うとここがソフトクリーム」


親指の腹でゆるく首筋を撫で上げられて、ぞくりと身体が跳ねる。するとその反応を目前に「もしかして首感じんのか?」なんてニヤリと笑われたものだから少し悔しい気分になった。


「…で、キッドの吸うとこがシャーベット的な?」
「そーいうこと」

言いながら今度は二の腕をなぞられる。く、くすぐったい!
思わず身を引くと、あっさり離れたエースの手がするりと足まで降りてきたから焦燥する。おいおい、しかもそこ内腿じゃん際どいじゃん…!


「ちなみにローがやってるこの辺がかき氷とシャーベットの中間ってとこだな」


一段と笑みを深めたかと思えば、触れるか触れないかという絶妙なタッチでエースの手の甲が内腿を這い上がっていく。

…な、なんだろう。手のひらで触られるよりこっちの方が変な感じだ。
ていうかそろそろ止まれ!わたし今日スカートだからね!そのままいったらマズいって!


「しかもその顔…!」
「は?顔?」
「やらしい!エロい!」
「そりゃまあ、こんなことしてたらそーいう気分にもなるって」


冗談めかして言う割に目がマジだ。
ちょっ、何?なになになに!?

「う、わっ!」

動揺やらなんやらで目を白黒させていると、トンっと肩のあたりを押されて背後にあったベッドに倒れこむ。それも何故かエースまで一緒になって雪崩れ込んできたからなおさら意味がわからない。

どうしよう。どうしよう。
覆い被さってきたエースをぼんやり見上げながら頭を悩ませていると、色めかしく目を細めて「抵抗しねーの?」なんて言うもんだから思わず顔が引き攣った。だってなにその意味深な発言…!ひいぃっ!


「て、抵抗しても吸うくせに!」
「そっちじゃなくて」
「そっちじゃないって…、」
「ンな無抵抗だとマジで食っちまうぞ」
「………は?」


なにそれ?
もぐもぐの方の食う?それともアハンウフン的な方の食う?暗喩?
なんて思ったのも束の間。
いや、どっちの意味でもありえないでしょ!どう考えてもナシでしょ!


「うぎゃー!離せ!」
「あ、やっぱダメ?」
「当たり前だわ!早く離れてよ!」
「じゃあそれは諦めっから今日は別のとこから吸わせてくれよ」


胸板あたりをぐいぐい押し返してシャウトするも、まったく気に留めてもらえず挙げ句の果てには注文まで付けられてしまった。
別の場所…?なにそれどこ。
警戒心マックスでエースを見れば、今日一の笑顔を向けられて無意識の内に冷汗が滲む。


「エースは首が1番好きなんじゃないの…?」
「厳密に言うと首は2番」
「へえ?」
「どの吸血鬼も共通して1番はココだ」
「っ、ちょっ?!」


シャツのボタンを素早く片手で2つほど外され、鎖骨の下あたりにぬるりと舌が這わされる。そしてそのままゆったり下降したかと思えば、左胸のあたりにズンっと襲いかかる鈍い痛み。
こうなったらもうひたすら奥歯を噛み締めて痛みをやり過ごすしかない。痛い。痛い痛い!

ほんっっとに下手くそだな、エースの奴…!


「ねえ、そこ痛み引かないんだけど!」
「んー」
「継続して痛い!むり!やだ!」
「いてっ」


じくじく痛むそれに耐えられなくてエースの右頬あたりを軽くグーパンしてやった。するとあっけなく口が離れ、刺された穴からつうっと血が伝って。急いでティッシュを取ろうと身を捩るものの、目をギラつかせたエースに「拭くなよ」と再度ベッドに押さえつけられてしまった。


「っ、」
「あー、やべ。桁違いに美味い」
「も、もういいでしょ!はい、終わり!」


無理やり頭を押して引き離すと、満足気に微笑んだエースにぎゅーっとされてなんだか力が抜けた。


そしてどうやら心臓付近の血というのはズバ抜けて美味らしく、後日この話が漏洩して残りの2人が「俺もそこがいい」と意固地になったのはまた別の話だ。

吸われる側としては最高に痛いのでぜひとも遠慮させていただきたい。断固拒否、である。


(無痛にしてやるから吸わせろよ)
(そーいう時ばっかり!出来るならいつもやってよローのあほ!)
(わかったからさっさと服脱げ)
(……。)

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何故かオチがローさんになってしもた(´・ω・`)
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