01.ずばぬけてさびしいあのひまわりのように(‘94.11.20)

【会場】奈良教育大学 講堂

【原作・脚本】俵 万智 

【スタッフ】演出/太田垣 学 照明/山口 砂富 音響/讃井 雄 舞台監督/太田垣 学
大道具/久下沼 有希子 サポート/松永 陽史 橋之口 尊文 手塚 有紀 藤原 亮祐

【キャスト】桜木 ハルミ・・・廣田 真理  
      蕗谷 賢治・・・上野 匡 
      花田 亀吾郎・・・川城 精司  
      北川 ユリ子・・・添谷 史香 
      渡辺 たかし・・・河合 丈志  
      田川 耕作・・・土井 敬真
      樋口 明夫・・・川阪 俊一
      八十島 保・・・西岡 慎介 
      牛島 正太郎・・・太田垣 学

【あらすじ】
こんなのどかな村が今の日本に残っていたなんて…。
そんな風にさえ思わせる「めぐり村」に、天才歌姫と評判の女子高生を訪ねて、東京からやってきたプロダクションマネージャー:蕗谷 賢治。未来に大きな夢を抱く、一本気で自由奔放な少女:桜木 ハルミは、そんな蕗谷の突然のスカウトに、戸惑いながらも故郷を離れる決心をする。美術教師:花田 亀吾郎への一途な恋心を抱くハルミ、そんなハルミを心配しつつも慕う、硬派で保守的な幼なじみの牛島 正太郎、またその正太郎をひそかに思う北川 ユリ子。そしてその同級生たち。みな一様に、めぐり村への愛着と、都会へのあこがれ、将来への期待と不安に揺れていた。
そんな彼らの前に現れた都会からの来訪者、蕗谷。それをきっかけに彼らの未来は大きく枝分かれしてゆく。夢とは?希望とは?成功とは何か。誰もが行き当たる青春の壁。岐路に立たされた高校3年生の夏から10年、めぐり村にまた夏が巡ってきた。
「一生が一瞬に思える」「一瞬が一生に思える」そんな「瞬間」を探し求めて浮遊する彼らの見つけたもの、それは草原を吹き抜ける風に揺れる、大輪の「ひまわり」だった………
つか劇団の演出に恒例のキャストによる歌とダンスや、めぐり村の伝統ある芝居小屋「めぐり座」で繰り広げられる「牛島 正太郎・軍服ショー」など、劇中レビューも見所。

【解説】
記念すべきキラキラ座第1回旗揚げ公演の演目。
原作は「サラダ記念日」で著名な作家、俵 万智氏。俵万智第一回戯曲作品として、つかこうへい事務所により、1994年1月に初演された。(ちなみに主なキャストは桜木ハルミ:生方和代/牛島 正太郎:山崎銀之丞ほか)
キラキラ座は座長:太田垣 学(当時:院1回、劇団東俳所属)の呼びかけで、同輩・後輩の有志により結成された。当初は1回限りの単発公演として上演、「旗揚げ、即解散」の予定だった。
座長の太田垣が役者修業で上京中、つかこうへい劇団の公演を見て深く感銘を受け、自分たちもこんな舞台をやってみたい!という思いから、大学復学後の秋に急遽スタッフ・キャストが召集された。太田垣の内心には、「このキャストならあいつに…」というようなおおよそのイメージは出来上がっていたらしい。ほぼ主要キャストは太田垣によって直接口説かれた。とりわけ主役の桜木ハルミ役のターゲットにされた廣田真理(当時院2回)に至っては、勧誘された時、修了論文制作の真っ直中だった。(太田垣の学部時代の同回生。太田垣の役者修行休学により、1学年差が開いた)当然のごとく、当初参加に躊躇した廣田だったが、太田垣に提供されたオリジナルの舞台資料に触れ、脚本のテーマに深く共感。半ば現実逃避も手伝って、以後意欲的に舞台制作に参加。無事主要メンバーも揃い、太田垣座長の指示の元、台本のセリフを一言一句変えることも許されない厳しい演出が続いた。プロが書いた脚本。つかこうへい劇団で目の当たりにした完璧な舞台。太田垣の求める完成度のハードルは高かったが、公演までおおよそ1ヶ月の突貫工事でなんとか初舞台に漕ぎ着けた。
この時は、キャストと裏方が兼任で、台本起こしから音源、小道具手配まで、ほぼキャスト自らが奔走して揃えた。当日生演奏で花を添えた手塚・藤原両氏や、後にキャストとしてキラキラ座に招かれることになる、技術科所属(当時)の久下沼氏の大道具製作協力などは、とても心強いバックアップになった。(藤原氏も第2回公演よりキャストに招かれる)
バックアップといえば、深夜に及ぶ制作や稽古の合間に心温まる差し入れをしてくれた時政氏も、キラキラ座の母として、この後も大きく関わることになる。(時政氏は後に10周年記念公演の#26にて初舞台を踏むことに…)
1発勝負の初演当日。
当時奈教に活動中の演劇サークルがなかったこともあり、珍しさからか、思いの外客入りは盛況だった。殊に最前列で熱心にご覧になっていた西野教授(彫塑研究室)。プロの舞台のいわば「コピー芝居」ではあったものの、キャスト達の熱演にいたく感動された教授は終演後、座長太田垣と握手を交わし「2時間が短く感じましたよ」と、最上級の褒め言葉を下さった。その言葉に座長は思わず胸を熱くしたという。これを機に、西野教授自ら顧問役を買って出てくださり、キラキラ座は後に有志サークルから大学公認の「部活動」へと昇格することになる。
オリジナル作品ではなかったが、それぞれがドシロウトなりに完成度は高く、キラキラ座にとって記念すべき第一歩となった。
【文責/OB:廣田真理】

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