38.弱法師(‘09.2. 21)

【会場】奈良教育大学 山田ホール
【スタッフ】広報・パンフレット制作●木村仁美etc
【キャスト】
川島・・・糸井茂裕
川島夫人・・・庄真菜未
高安・・・川島賢太
高安夫人・・・田中万結 etc

【あらすじ】
とある家庭裁判所で、二組の夫婦が子どもの親権をめぐって話し合いを行っている。
子どもの名は俊徳。
15年前の空襲で生みの親である高安夫妻と行き別れ、物乞いをしていたところを川島夫妻によって引き取られたのである。
お互いに一歩も譲らぬ言い争いを続ける両夫妻に対し、調停員の桜間級子は、一度席を外し俊徳と二人で話をさせてほしいと言い放つ。
俊徳との会話の最中、ふと窓の外の夕焼けに感嘆の声をあげる級子。
一方で「あれは夕日なんかじゃありません!」と叫び狂う俊徳。
その時、俊徳の目には、15年前に彼から光を奪った炎の記憶がよみがえっていた・・・

【解説】
2005年新入団員による卒業公演。
この年の新入団員といえば、新人公演に年齢制限を設けてみたり、自主制作映画に取り組んでみたり、学祭でおかまバーを経営してみたりと、前衛的で一風変わった企画を数多く生み出し周囲の人間に衝撃を刻み続けたことである種語り草になっている。


本公演では、「家庭裁判所の中」という舞台設定を、パーテーションで山田ホール内の空間を切り取るという発想で再現した。パーテーションは舞台上のみでなく客席の周囲をも囲む形で設置されたため、最初会場に入ってきた観客は、こじんまりと並んだ仕切りの正面に受付がたたずんでいるのみの不気味な光景に戸惑いを隠せない様子であった。

一方仕切りの向こうでは、一部の役者が下品な会話で緊張を紛らわしていたり、本編とはまったく無関係なコスプレグッズが転がっていたりと騒々しい様子だったのだが・・


ちなみにこのコスプレグッズとは、俊徳役兼演出の改原氏がその昔着用していたセーラー服であり、これはキラ座の「男性」達が数多く袖を通してきた由緒ある衣装でもあった。
今回は本番中ではなく、アフタートークでMCをやらされることになった糸井が着る為に持ち出された。
演出上の意図は、ない。


とにかく邪な遊び心と茶目っ気たっぷりな卒業生たちであったが、演技にかける姿勢は本物であった。
特に、女優陣がそれぞれ役を努めた俊徳と級子は台詞の量が多く語彙も難しいものばかりで構成されていたため、卒論提出を間近に控えてんやわんやだった2人は稽古の度に頭を痛めていたものである。

とりわけ俊徳に用意された最長の台詞は5分以上にわたり絶叫と狂気の立ち回りを伴うものであったため体力の消耗も激しく、それに対して淡々と会話の切り返しを行う級子も相当の集中力を必要とし、この場面の稽古では、演技を見ていた他の役者も一緒に緊張させられるほどであった。

それだけに、この俊徳と級子のかけ合いは作中屈指の名シーンとしてアンケートでも高い評価を得た。



なお、改原氏は長台詞を覚えやすくするため、「言葉を図式化して、イメージで覚える」という手法をとった。
しかしホワイトボードに描かれたそれは、象形文字の成立過程のような、暗号じみた絵の羅列だったという。

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