赤司様、赤司様と朝から煩くて、最近わたしはイヤホンを耳にし登校している。
これといった好きな曲があるわけではないが、女子たちの黄色い声がBGMよりはだいぶマシだ。

まるで中学生とは思えない、大人びた、そして慣れた言動をする彼は、
(なんだかかわいそう。どうしてそんな悲しそうな、寂しそうな笑顔をするんだろう)
いつかその表情が崩れる日が来るのだろうか。
そんなことを考えながら毎日彼を目で追うわたしのことだって、赤司くんはきっと眼中になんてなくてあの黄色い声の女子の一人としか思っていないのだろう。

そんなことを思いつつわたしは湧き出てくるこの気持ちを、きっとずっと届かないであろうこの気持ちを音楽を聴いてどこかへ流している。

ふと、目の前が暗くなった。
顔を上げると、彼がいた。





「おはよう、名字」
「おはよう赤司くん」


ふう、と溜息をつき、赤司くんはわたしの隣の席につく。やっと解放されたと言わんばかりの表情だ。


「毎日毎日朝からご苦労様だね」
「...ちょっと控えてくれると嬉しいんだけどね」


赤司くんは小声でそう言って苦笑いをした。
彼とは隣の席で、普段は少しだけ会話をする。
いつも話題を振ってくれるのは彼なのだが、わたしは緊張から素っ気ない返事ばかりし、結果、会話を切ってしまう。
もっと話がしたいな。そんな思いと態度は裏腹だ。


「今日も音楽聴いているんだね」
「うん」
「最近聴いているようだが、好きな歌でもあるのかい?」
「特に無いの。むしろ教えて欲しいくらい」


早口で話すわたしを、ぶっきらぼうに答えるわたしを彼はどう思っているだろう?


「.........」
「...?赤司、くん?」
「ああ、すまない。いや、あまりにも素っ気ない返事だったから、俺の事嫌いなんだろうな、と考えていたんだ」


ああ。
この人も繊細なんだ。
大人びた彼もまだ高校生なんだ。


「ご、ごめん、まったくそんなつもり、なくて、」
「それならよかった、」

そう言って彼はあの寂しそうな笑顔を浮かべた。
よかった、と言っているけど、それでも何か言いたそうな感じに見えるのは気のせいかな。
違う違う違う、違うんだよ赤司くん。
そんな顔して欲しくないよ。

「気になる子に素っ気ない態度されるのは、けっこう堪えるものだな」
「え?」
「##NAME3##が好きなんだろうな。俺は」
「...っ、」


あまりにも突然すぎて、思わず夢じゃないかと自分のほっぺを摘む。
いたい、...夢じゃ、ない。
言いたそうにしていたのはこの言葉?なんて冷静に思っている自分もいて、でもまさか彼からこんな言葉が出てくるなんて思わなくて再び一気に体温が上昇する。

「ふっ。さっきから赤くなったりほっぺ摘んだり忙しいな、##NAME3##は」

すべて見透かされていた、やはり、というべきか。
クスクスと笑う彼を見て、とてもくすぐったい気持ちになった。
ああやっぱりわたしは、



「好きだよ、赤司くん」

何となく、だけど、彼の目が丸くなった。
そして本当に優しい笑顔で呟く。


「ありがとう。俺もだよ」




心臓がはねる。
けれどこれから先、望んでもきっといっしょにどこかに行ったりいっしょに登校したりなんて、できないだろう。
毎日女子に囲まれ、何より忙しい部活。
その中に、わたしの入る隙は、ない。
でも少しなら、ほんの少しなら、困らせてみてもいいかな、困らせたいな。
なんて我儘な思いが生まれる。




「あ、あの、赤司くん!」
「なんだい?」














「明日たとえば、