今日は晴天だ。
これから暑くなりそうな、じんわりと熱気がくる風が吹く、そんな日。







「やっぱ裏庭はいいね。日陰だから風が気持ちいい」
「んー。ねみぃ」
「まぁーた青峰くんたら。牛になっちゃうよ」
「お前はブタな」
「サイッテー!」


彼の頭におもいっきりゲンコツをお見舞いしてやった。
ゴンッといい音だ。



「ってーなー名前お前...!!」
「青峰くんがひどいこと言うからでしょ!」
「いつもそんな甘ったるいキャンディ舐めてるくせにわたしは違う、なんてムシが良すぎるぜ?」
「くっ...」


確かにそうだけど。
すぐ言い負けちゃって、なんか悔しい。
彼は普段はこんなだけど、バスケになると顔つきが変わる。
本当にかっこいいのだ。
告白は青峰くんからだったけど、わたしだってだいすき。


「名前さ、」
「...今度はなによ」
「それ、香水か?」
「そうだけど」
「なんかちげーわ、それ。それより...」
「違うってなによ?バカ青峰なんてもうしらない!」




...だめだ、こいつ。
ほんっとデリカシーなさすぎて怒りを越して呆れちゃう。
この匂い青峰くんすきかな、とかもっとくっつきたいな、とかたくさん考えたのに。
すきだからこそ、なんか悲しい。
彼を振り向かずに早足で立ち去る。




「おい待てって」
「は?やだよ無理来ないで」
「...ったくめんどくせぇな」



その声と同時に手首を掴まれ、唇に何か当たる。



「人の話最後まで聞けよ」
「なんで、」
「その匂いで他の奴寄ってきたらどうすんだ」
「!」
「それに、」
「それに、なに...」








彼がわたしの耳元でぼそっと呟いた。






「俺はこっちのが好きだぜ」











唇に何か当たった時。
わたしの口から奪われたキャンディ。
青峰くんはニッと笑って歩き出す。










わたしの頬を熱い熱い風が吹き抜ける。







今日はきっと、もっと暑くなる。

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