わたしたちは喧嘩をした。

せっかくのデートなのに、観たい映画も食べたいものもそのあと行きたい所も(公園なんてカップルが行きますと言わんばかりの所じゃねぇか、で却下)ぜんぶぜーんぶ合わなくて。

嫌になったわたしは、もう帰る!恭也くんなんて知らない!と、恭也くんの引き止める声も無視し帰宅した。


そんなことをしたからバチが当たったのかな。
わたしは今日、風邪を引いて学校を休んでいるのだ。

わたしは悪くない。
昨日はその一点張りだったが、夜になり、恭也くんからの着信履歴を見てるうちに、わたし、欲深くなったななんて冷静に考える自分がいて。
今恭也くん、怒ってるかな。
もしかして、悪かった、なんて思ってる?
いやいや、それはないわ。
そんなこと考えてるうちに、布団も掛けずに寝てしまって、今に至る。

恭也くんに何かメールしなきゃ。
昨日は勝手に怒って帰ってごめんね?
もっとわたしのこと考えて欲しかった?
違うよな。
今思ってるのは、
「恭也くんに会いたいな」












ガチャ。














「ん?ガチャ?」
「よお名前」
「?! き、恭也くん!?え、な、なんでここに、」

恭也くんは、はあ。と深くため息をつく。

「先生が名前は風邪だって言うから寄ってやったんだ。そしたらお前のお母さんにあげてもらったんだ。昨日の夜から元気ないから行ってあげて、てな」

せっかく来てくれたわりには、あまり機嫌が良さそうではない。
まあ、当たり前か。

「来てくれてありがとう、それと、」
「...」
「昨日は、」
「いい」
「え?」
恭也くんの右手が、わたしの口の前へ伸びる。

「昨日のことはもういいって言ってるんだ」
「だって昨日はわたしが勝手に怒って勝手に帰って...ぜんぶわたしが悪いから」
「それはその通りだ」
「だから良くないじゃん!」
「良い悪い、じゃないだろ」
「それは、」

言葉がつまった。

「俺は名前と一緒なら、デートスポットなんてつまらん所じゃなくても家だってその辺のレンタルビデオ屋だっていいぜ」

涙が出た。
恭也くんの本音。
昨日の電話にちゃんと出ていたら、昨日のうちにちゃんとこういう話出来たかな。

「昨日の電話、出なくてごめんね。今日メールしようと思ったんだけど、何て言えばいいか分からなくて」
「今はその話じゃねぇだろ」
「会いたいなって、恭也くんに会いたいなってメールしようとしたら、恭也くんが来てくれたの、本当にうれしくて」

また泣けてきた。

「お前泣きすぎ」
「うん、うん......わたしも、どこだっていい。恭也くんと一緒なら家でもレンタルビデオ屋でも」
「おう」


そのあと恭也くんは、わたしをぎゅっと抱きしめてくれた。




「ねえ、顔見たい」
「黙ってろ」

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