「はあっ、はあっ...」


季節は冬。
雪こそ降ってないがやはり寒い。
そんな中わたしは走っている。
大好きな赤司くんの誕生日を忘れていたからだ。

赤司くんがバスケ部に入ることを知り、迷いなくバスケ部マネージャーを希望し入部したあの日から8か月。
実渕先輩に聞かされ今さら知ったなんて言えないし、何より片思いなのだから誕生日を知ってようが知っていまいが赤司くんには関係ない。
けれどこれだけ好きなのだからきっと伝わってるはず。祝ってもらえてうれしいってきっと思ってくれるはず。
わたしはそんな浮かれた思いを胸に赤司くんの家へ向かった。




+++++




ピンポーン。
チャイムを鳴らす。

「はい」
「はあっ、あ、赤司くんっ、あのっ、わたし!名前です!」
「ああ。名前か。どうしたんだい」
「えっと、あの...お祝い、させてください」

本人を前にするとやはり緊張してしまう。

「?よく分からないが...今行くよ」

赤司くんはそう言うと出てきてくれただけじゃなく、家に入れてくれた。
気配りしてくれるところも大好き。

「紅茶でいいかい?」
「う、うん!ありがと...ね」

コト、と、目の前にはとても綺麗なカップに注がれた紅茶。
ゆらゆら揺れる水面には自分の顔が映っていて、なぜか少しだけ冷静になれた。

「それでお祝いって...ああ、もしかしてオレの誕生日?」
「うん、そうなの」
「ありがとう。いつも名前は一生懸命で見てて飽きないよ」
「...あ」
「?」
「赤司くん...プレゼント忘れちゃった...」
「手ブラで来たんだね」

赤司くんは名前らしい、とクスクス笑う。
ああ。この表情。
大好きな赤司くん。
胸がきゅっと締め付けられる。
伝わってるかな、じゃだめだ。
伝えなくちゃ。今ならきっと、

「赤司くん、プレゼントは後で渡すね。もうひとつ聞いてほしいの」
「どうしたんだい」
「赤司くんの隣にいる権利を、わたしにください」
「それじゃまるで名前の誕生日のお願いみたいじゃないか」
「そう、だよね。ごめん」


赤司くん程の人間に、わたしなんかが釣り合うはずない。
知ってた。知ってたけど、好きって気持ちさえあれば少しだけでも想いは伝わると思ってたんだ。
俯いたわたしは、涙を堪えるので必死だった。

「名前」
「はい...え?」

突然わたしは赤司くんにすっぽりと包まれた。

「あ、赤司、くん?」
「オレから言わせてよ」
「え?」













「誕生日プレゼントに、名前をください」

















2015.12.20
happy birthday赤司くん!

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