『わたしがきみを照らす明かりになります!!』
今の俺がいるのは、
『だからきみは笑ってて!』
名前がいたからとか、
『後ろは見ずに進んで』
「ぶっは!何それ告白かよ?」
笑われても今の俺がいるのは、
『不安に飲み込まれそうでも大丈夫、』
「ははっ!うけるっスよね!」
『わたしが隣で照らしてるから』
「...隣になんていないくせに」
『だから前に進んで』
「いないのに進めるかっての」
『強くあれ、黄瀬涼太!あなたの笑顔は、』
「なんスか」
『まわりを笑顔にする。...わたしも、救われた』
「泣きながら言われても」
『それでも救われたの』
「顔ぐしゃぐしゃ」
『強がってるんだよ』
「居なくなるんスか」
『きみの側にいる』
「そういうんじゃなくて」
『そう思わないと辛くて成仏できない』
「成仏しないでよ」
『それができればこんな顔してない』
「俺もそっちいくよ」
『それだけはだめ』
「だって名前がいない世界とかいる意味ない」
『きみにはやるべきことがたくさんある』
「名前がいるならっス」
『もう!......涼太のバカ』
「好きだよ。ずっとずっと好き」
『ねえ涼太』
「なんスか?」
『死にたくない』
最後の、ほんとの最期に彼女は本音を漏らし、俺の隣からいなくなった。
どこかのヒーローみたいなセリフを吐く彼女には好きな歌があった。
『これね、わたしの人生そのものなの』
耳にタコができるんじゃないかってくらい聞いた言葉だ。
自分の運命を呪った時もあったけど、俺と出逢えたことで間違ってなかったって、幸せな道だったと思えたって、そう言ったんだ。
最期までヒーロー気取りかよって思ったけど、やっぱり病弱なか弱い女の子だった。
泣きながら書いたと思われる手紙には、涼太ともっと美味しいもの食べたかった、いろんなところに行きたかった、と書いていて。
俺が読んでいて何より辛かったのは、
【涼太と普通に学校生活過ごしたかった】
だった。
【こんな狭い部屋にずっとずっと居なければいけないなら、わたしがあってならない存在だって消えてしまった方がまだいいのかな】
そっか。
同じ歳の女の子のように当たり前のことが思い通りにできなくて、あの狭い部屋であの歌を希望に過ごして。
「何やってんスかね、俺」
名前は誰よりも希望を持って、でも誰よりも悲しんでいた、はず。
「俺が笑って過ごさなくてどうすんだ」
「キャー!黄瀬くん格好いい!握手してー!」
「順番スよ」
「黄瀬くん、彼女いるの?好きな子は?」
「いないっス」
(これからも、)
「作る気もないんで」
(俺の中には彼女だけで、)
「オイ黄瀬、何笑ってんだよ」
「笠松先輩...いや、何でもねっス。さ、部活行きましょ部活!」
俺はこれからも笑って過ごしていく。
わたしの細胞が蝶になって、あなたの運命が翅になって
(My Dearest-親愛なるきみへ。わたしより好きな人つくるんだよ!)
2015.10.22