黒子くん、黒子くん、と人懐っこくにこにこしながら駆け寄ってくる彼女は、僕が想いを寄せている人。
この気持ちに気付いたのは最近で、彼女が僕とどうなりたいか、なんて愚問で、当たり前に可能性はゼロに近い。





「テツくーん!!」
「...名字さん、呼び方変えたんですか?」
「なんかね、さつきちゃんがそう呼んでるからわたしも呼ぶことにしたの!その方がもっともっと近いよね」


さつきちゃん、とは帝光バスケ部マネージャーの桃井さつきさん。
青峰くんの幼馴染みでもある。
彼女と桃井さんは移動教室やお昼の時間もいっしょにいるのをよく見かけるので、仲の良さは聞かずとも分かる。


「近い、ですか?」
「うん!テツくんともっと仲良くなりたいの」


それはつまり、友達として。
思わせぶりな態度は悪気ないものだから余計に厄介なのだ。
(人懐っこさ故に、なのだろうけど)
そのあたり黄瀬くんに似ている、と思う。そう思うたびにちくっとどこかが痛む音がするんだけれど、今はまだ核心に触れないように触れないように、出来るだけその原因に気づかないようにしている。
(感情を押し殺すのは影の僕になら、)


「僕も仲良くなりたいです」
「じゃあ決まりだね!テツくん!」


彼女は僕の手をぎゅっと握ると、すぐに離して桃井さんの所へ走っていった。




いつか、この気持ちに確信が持てたなら。
押し殺した感情が素直に表に出てきてくれたなら、必ず。
名字さん、必ず君の元へ、君に一番近い存在として側に居させてもらいますから、覚悟していてください。



決意の果てでぼくは