「...何しているのだよ」
ガラッと開けた教室の扉の前に立ち、左手には今日のおは朝占いラッキーアイテムであろうフクロウの木彫り人形を持った緑色の髪の彼は呟いた。
その真面目に見える(いや、本当に真面目なのだけれど)反面こうしてよくわからないものを、占いを信じ持ち歩く彼を少し可愛いと思ってしまうわたしはすでに病気なのか。
しかし誰にだってきっと、何かする前に必ずこれをやる、というのはあるものだと思う。
でも、よりによって彼が。
どうしてそんなギャップを持っているんだ、とまた可笑しくなる。
「そのフクロウ、目が、」
くりんてしてて気持ち悪いよ、木彫りなのに。と言い終える前に彼はわたしに向かって歩いてくる。
近い近い。
「質問の答えになっていないのだよ」
「ああごめん。何してるって、真太郎の机で待ってたのよ、部活終わるの」
そうか、と言うと、わたしの隣に座る。
それはつまり、真太郎のクラスメートの女の子の席で。
真太郎の事だから必要最低限の会話しかしないだろうし人事を尽くせればそれで結構。
そのはずなのに、どうしたのわたし。
「?!...なぜ泣いている?」
「...しんた、ろうの、バカ」
「なぜ、」
言いかけた後、席を立ち、ほら名前帰るのだよ、と言われた。
「うん、」
いつか離れていってしまうんじゃないかという不安に駆られるわたしたちを繋ぐのは、あえて何も言わずに合わせてくれる
歩幅
真太郎の優しさの塊。