01
* * *
赤に金の装飾を施したワンピースタイプの軍服に身を包み、透き通るような桃色の髪を靡かせながら馬に跨がるのはこの国の王女だった。
その横を一歩下がって並走するのは彼女の騎士だ。
「ーーーシェイナ王女」
彼女は振り向かない。
しかし聞こえていることを知っているため彼は構わず問いかける。
「どうもおかしい」
「同感だ」
これには短いながらも返事があった。
戦い自体は大したことはない。
いや、むしろ敵兵が少なすぎる。
「何処かに兵を割いている可能性がある」
彼がそう言うと彼女はそのまま黙って走り続ける。
不意に、彼女が手綱を引いた。
「シェイナ王女!」
左前方から一人の軍人がやって来た。
「私はこれから西に向かいます」
「西?」
「姫もご存知でしょう。こちら(南)に敵兵が少なすぎます。外れと見た方がよろしいかと」
シェイナは眉を潜める。
「……ラスカベル、私はお前を信頼している良きライバルとして」
「光栄にございます」
「お前が西が怪しいと言うのならそちらはお前に任せよう」
「はっ」
彼は馬上から一礼すると足早に立ち去って行った。
その背を見送りながらシェイナはさらに眉を潜める。
「……ブレッド、お前は東へ行け。ここはもうじき片付く」
「断る」
「何故だ?」
「俺はお前の騎士だからだ。それに、嫌な予感がする」
ブレッドは馬上で剣を構え直す。
「奇遇だな、私もだ。だからこそお前に任せる」
そう言われブレッドは迷いを滲ませる。
不意に、遠くから馬が掛けてくる音が聞こえた。
シェイナとブレッドは耳を済まして辺りを伺う。
「伝令ーーっ!伝令ーーっ!」
「王都が攻められましたっ……!西方より大軍が押し寄せて来ている模様っ!現在、国王陛下の安否は不明でございます!」
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