02
* * *
「如何なさるおつもりで?」
燈台に火は付いておらず、室内を照らすのは月明かりのみ。
目の前に横たわっている女を見下ろして、僧侶姿の男は不信感をむき出しにして言った。
「ここにいる事は奴等に知れましょう」
「人と妖は対立している。戦はとうに始まっている」
「しかし、この娘が見方になるとは・・・」
床に横たわる彼女を見て彼は目を細めた。
「この傷であの山中を走るのは無理です。普通の人間であれば」
床に横たわる娘の体には、あちこちに包帯が巻かれており痛々しい。
包帯で見えないが負った傷は生易しいものばかりではなかった。
彼の言う通り、この傷で山中を走り回るのは無理に近いだろう。
普通の人間ならば。
「―――何が言いたい?」
全て理解した上で彼は向かいの僧侶に問うた。
「我々は貴方に従います。ですが―――この娘を敵と見なしたら容赦はいたしません」
鋭い目付きで睨まれても臆する事なく彼はその瞳を見据えた。
やがて風に銀髪を靡かせながら月を見る。
「―――好きにしろ」
呼ばれた。
あやかし屋様、と消える様な声で。
ならば、差し伸べないわけにはいかない。
自分は約束したのだから。
「―――全てはこの女次第」
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