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「ひーめさん」


ひょこっと顔を出した白蛇に驚きつつ鍋を火から退けて返事をする。


「はい」


「ちょっと暇?蒼詠がいないから店番してほしいんだよねー」


「・・・店番?」


店番と聞いて思い当らなかったので首をかしげていると白蛇が苦笑した。


先日の様なこともあるが、白蛇と仲が悪いというわけではない。


「うちの呉服屋じゃなくて、ここの店番ね」


「店・・・確かに店の様な造りですがここは何か売っているんですか?」


室内を見回してここの全体図を把握するが想像がつかない。


だが、店の様な造りをしているのは確かだ。


「ええ、ここも立派なお店ですよー。ちょーっと妖しいですけどね。今日は薬を渡してほしいんですよ」


「・・・薬、ですか」


白蛇が言うには蒼詠が薬を調合して普段は売っているそうだ。


薬屋というわけではなくここは「あやかし屋」。


まだまだ菘の知らないことがたくさんありそうだ。


「もう調合とかは済んでるんでただ渡してお金を受け取ってもらえればいいんで、お願いしますよ!!私はちょっと忙しいんで」


「分かりました」


「緊張するのは最初だけで意外と接客に向いてると思うんですよねー」


緊張しているのが伝わったのか、白蛇が励ましてくれた。


「あの、和葉様は・・・」


「さあ?そういえば今日はまだ見てませんね・・・。まあ、あれでも忙しい方なんで。そのうち帰ってくるでしょう」


「いーやーだー」


不意に、奥の方から聞こえた叫び声に二人は顔を見合わせる。


「・・・ん?」


「朔・・・の声ですね」


声はだんだんと大きさを増してどうやらこちらへ近づいてきている様だ。


「だーかーらー蒼詠様一人で行って来ればいいじゃん!!俺は嫌だよ行きたくない!!」


「和葉様の命です。それに蓮殿も朔を連れて来いと・・・」


「・・・何を、しているのですか?」


嫌がる朔を無理やり引きずっている蒼詠の姿を見て菘は顔を引きつらせる。


それを見た蒼詠は眉間にしわを寄せて菘の方を見た。


「見ればわかるでしょう。朔を引きずっているんです」


「まんまじゃん」


呆れた様に白蛇が言葉を返す。




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