02
薄暗い室内に、明かりが灯る。
部屋の入り口の方から順番に勝手に燈台に火が灯される。
満足気に笑みを浮かべると、部屋の外から控え目な声がかけられた。
「―――お連れ致しました」
フッと口端を上げると、控えの者に合図を送る。
それと同時に両方から戸が開かれた。
忍の者に無理やり連れて来られた女性は、キッと段上に佇む青年を睨み付ける。
「あなたに用はないわ」
「クックック。相変わらず口の悪い女だ。季雨、お前は下がれ」
「―――は。それと、巫女の行方ですが・・・いまだ掴めておりません。ですが、あやかし屋が女を匿っているという噂を耳にしました。いかがいたしますか?」
「はははっ!!あやかし屋?・・・しばらく泳がせておけ。面白いものが見れそうだ」
「―――御意」
季雨と呼ばれた忍の青年は、一礼すると、言われた通り部屋から姿を消した。
「―――さて」
ちらりと目を向ければ、目の前に座る女は相変わらず自分を睨み付けていた。
「お前か」
フッと風早は笑みを浮かべる。
「あの娘を逃がしたのは」
「逃がしたんじゃないわ!!・・・っ!?」
段上からの距離はあったはずだ。
それなのに、風早は自分の目の前にいて、糸も簡単に唇を奪った。
「―――・・・」
「屈辱か?抵抗できない自分が」
「・・・」
「または、それすらも感じないか?心を、捨てるのか?」
口端を上げて楽しそうに風早は笑う。
「・・・安心しろ」
感情の無い目で紫斎は風早を見上げる。
「お前はもうすぐ」
妖艶に微笑む彼から目が離せなかった。
「―――死ぬのだから」
妖艶に紡ぐその言葉が、斎紫の心を重く縛った。
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