08

 
 
「・・・っ」


図星をつかれて青風は目を見開いて固まった。


「青風・・・私たちには、ううん、龍作には青風が必要なのよ。だから、もう、勝手にいなくなったりしないで」


「舞姫様・・・すみません。すみませんでした・・・」


青風は舞に頭を下げて何度も謝る。


必死に謝る青風の顔は今にも泣き出しそうだった。


そんな青風の頭を舞は数回撫でる。


青風が戻ってきた、と舞はようやく安堵した。



* * *



霜惺達のいる土間へ戻るため、舞と青風は廊を歩いている。


青風はすっかり落ち着き、舞の後を付かず離れずの距離で付いてきている。


ふと、舞は足を止め右手側の庭を見る。


何かが視界に入った様な気がした。


「椿・・・?」


舞が庭に目を向けると、ぼとりと椿の花が一つ落ちた。


「舞姫様、どうかしましたか?」


「えっ・・・ううん、なんでも」


不意に、二人は目を見開いた。


椿の木の後ろから一人の少女が姿を現した。


「童(わらべ)・・・?」


青風が呟くと、少女は静かな、見た目とは似つかわしくない瞳でこちらを見た。


「ーーー桜木の姫」


「え・・・?」


「よねを、守って・・・」


それだけ呟くと少女はくるりと踵を返し去ろうとする。


「ま、待って・・・!」


手を伸ばし舞は呼び止めるが、少女は振り向きもせずに姿を消した。


「いったい・・・なんだったの?」


「あの童、微かに土の匂いが・・・」


青風は顎に手を当てて思案する。


何処かで嗅いだことのあるような匂いだった。


あれはーーー。


「土?」


「そうだ!洞窟!」


「なに?」


「舞姫様、あの童から微かに洞窟とかの湿った土の匂いがしました!里人が消えたことを何か知っているかもしれない」


「土の匂いなんて、何でそんなの分かるのよ?」


「各地を転々としているときはそういう場所を調べたり、寝泊まりしたりしてましたからね」


なるほどと舞は思った。


青風の言うように確かにあの少女は怪しい。


いや、怪しすぎるし不気味だ。


「こんな山奥で、私を知っているなんて・・・おかしいわよね」


「・・・舞姫様ならありえるかと」


「ちょっと青風!それどういう意味よ!」


「わっ、す、すみません」


「とにかく戻りましょ」


「そうですね」







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