03
舞姫の豪快さは嫌いじゃない。
自分達には見えないものだって、彼女の澄んだ瞳なら、全てを見通すことができるかもしれない。
というか、少しくらいおてんばでなければ、少なくとも自分達の知っている舞姫ではないだろう。
自分達の知っている舞姫という姫は、何かに縛られる事を嫌い、嘆く暇があるならじっとしてないで即行動する様な人物だ。
「自分でもね、どうかしてたと思うのよ。うじうじ悩んでたって仕方ないのにね」
そう言って舞姫は少し困った様に笑う。
舞姫にこんな顔をさせたともし龍作が知ったら、ただでは済まされないだろうと思った。
「きっと妖の気に当てられたのでしょう・・・」
「うん。でも、それだけじゃないとも思うんだけどね」
少しだけ寂しそうに話す舞姫を見て、青風はそのまま月を見上げた。
今にも赤く染まりそうだ。
「―――舞姫様」
くるりと向きを換えて舞姫に向き直ると、青風は片膝をついてスッと両手を前に差し出した。
「これは・・・?」
青風の掌に乗っていたのは、一枚の扇だった。
それも、ただの扇ではない。
紙製ではなく固い造りのものだ。
「それはただの扇ではありません。使い方次第では良くも悪くもなる。どうぞ、護身用にお持ちください。必ずや、貴女様の役にたつことでしょう」
そして少し困った様な顔で笑う。
「とは言っても、刀以外は造った事がないのであまり期待しないでくださいね?」
舞姫はクスリと笑う。
「そうね。青風の刀は天下一品だものね」
* * *
―――願わくは・・・。
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