第四話 弐
龍作はフッと笑う。
「様、じゃないだろ・・・」
あっ、と言って湍水は慌てて口を手で覆う。
「済まないが・・・」
「はい。わかりました、では」
龍作はしばらく呆気にとられていた。
まさか言う前に察してくれるとは思わなかった。
―――さて、どうするか。
「まずは、桜木邸へ行くか」
* * *
長い廊を小走りに進んで行く。
一つの部屋の前で足を止めると呆然と立ちすくんだ・・・。
「どうして・・・」
「上がらせてもらってる」
「それはいいのだけど・・・どうして?」
舞姫がそう呟くと龍作は自嘲する様に薄く笑った。
「―――直忠様に文を貰った。今日の黄昏時に来るように書いてあった」
「いったい何のお話で・・・?」
「・・・さあな。とりあえず、座ったらどうだ?」
「え、ええ・・・」
言われるがまま舞姫は部屋に入り端座する。
しばらくすると誰かが慌てて走ってくるような足音が聴こえた。
「・・・姫様、舞姫様!!大変でございます・・・!!」
「よ・・・よね!?落ち着いて」
舞姫御付の女房である『よね』が泣きながら部屋に飛び込んできた。
一体何があったと言うのだ。
「―――・・・旦那様が姫様をお呼びです」
舞姫と龍作の表情が凍った。
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