第三話 参
舞姫が答えると「かしこまりました」と返事が帰ってきた。
舞姫はギュッと衣の袂を握り締める。
本当は、どんな顔して会えばいいのかわからない。
不意に、御簾が上がる。
「―――昨日ぶりだな」
「龍作・・・、様」
呼び捨てにしそうになって慌てて様をつけた。
龍作はそれに気づいて少し眉をしかめる。
だが、あえて何も言わなかった。
言えば舞姫を傷つけるだけだ。
「・・・あれから何かあったか?」
舞姫は首を横に振る。
「いいえ・・・、得に、何も・・・」
「そうか・・・。あまり、自分を責めるなよ?」
ハッと舞姫は顔を上げる。
―――責める?
今の自分がかなり頼りないのは分かってはいるが、自分は何を責めているというのだろうか。
「責めてなど・・・おりません」
「なら、いいんだが・・・。」
ふと、龍作は黄昏始めた空を見る。
「―――近いうちに彼奴を呼ぶよ」
え?と舞姫は目を見開く。
「正直言って俺だけじゃキツい。それに、そろそろ頃合いかなと思ってさ・・・」
「そう・・・。随分時間がかかってしまっていたのね・・・」
だが、舞姫の顔に仄かに笑みが浮かぶ。
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