第三話 弐
龍作は逃げる様にその場を去って行く。
その後ろ姿を眺めながら湍水はチラと角を見る。
すぐそこは陰陽寮だ。
会って行けばいいのにと思うのだった。
* * *
武官というのは主に都の警備や警護が仕事だ。
故に暇というわけではない。
ないのだが・・・。
「うーん・・・、やっぱりここにもないか」
龍作は一人、薄暗い塗籠の中で書物を読み漁っていた。
今は丁度休憩時である。
少しの時間をも無駄にしてはならないというのが教えである。
「ここにもないとなると・・・」
やはり奴を呼ぶしかないか。
「―――よし」
パタンと書物を閉じると龍作は塗籠を後にした。
* * *
「―――舞姫様」
御簾の向こうで声がした。
「何?」
「―――龍作様がお見えです」
「通してちょうだい」[ 10/36 ] [*戻る] [次へ#]
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