第三話






―――大内裏。

数冊の書物を小脇に抱えて長い廊をゆっくりと歩いて行く。

「龍作様ー!!」

遠くから自分を呼ぶ声が聞こえた。

「湍水君か?」

ついでにドカドカ走ってくるような音まで聞こえてきた。

振り返れば、笑顔で手を降りながら走ってきているではないか。

龍作は慌てて彼を制する。

「―――湍水君。廊下は走っては駄目だと言っただろうが」

「す・・・すみません!!以後、気をつけます・・・っ!!」

「―――・・・なんてな。俺も最初はそうだったよ。優雅になんて、柄じゃないんだよな・・・。でも、様じゃなくてせめて殿な」

「―――はい!!」

湍水と呼ばれた少年は元気良く頷いた。

「―――で?何か用か?」

「え、あ、いえ・・・。たまたま見かけたものですから」

少し照れた様に笑う。

人好きのする笑みだ。

「そうか・・・。そういえば、師匠は元気か?」

師匠とは、龍作に陰陽道の知識を叩き込んだ人物である。

齢わずか二十二で龍作から師匠と呼ばれていて、都随一だと龍作が言うほどである。

「ええ、まあ。少し前までは参内されていなかったのですが、今日は来てますよ。会っていかれますか?」

最後の言葉に龍作は「げ」っという顔をする。

「冗談じゃない。休んでるかと思えば・・・。とりあえず俺は行く。じゃあな!!」



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