おそ松さん×うたプリ

過去拍手

保留組相手のお話です。扶養組への当たりが強いかもしれませんが、扶養組も好きです。



アイドルなんて辞めたいと、何度願ったことだろう。
スポットライトに照らされて輝くその姿は、私じゃない誰かでもよかったはずなのに、なぜか私が可愛らしいアイドルらしい服を着てステージに立ち、私を望む大勢のファンたちの歓声に笑顔で手を振る。

ヤンデレ達に押さえつけられてきたスキルがこんなところでも役に立つなんて思わなかった。


ここはうたプリの世界。



輝くステージで舞うアイドル達を支えながら恋愛をするゲームの中で、私は一人ぼっちだった。早乙女学園長が私を見つけて、無理矢理デビューさせて。なのに、私の名前も知らないんだ、あの人は。
今までずっと補正に頼り切った人間関係を作ってきていたのだと痛感させられる。頑張れば認めてもらえるかもしれない、そう淡い期待をした私は与えられた仕事を全部こなしてきたが、それが裏目に出てしまった。
この世界では、私の呪いは一般人にしか効かないようになっていたのだ。


頑張れば頑張るほど私のファンは増えていった。


鈍い狂気の光る瞳のファンが。



その数は武道館ライブを、例えば3回すれば3回全部が違うファンで満員御礼になるくらい。




私と関わる芸能人、学園の生徒はファン達のよって密かに撃退されていった。


その中にあの春香ちゃんも混ざってしまったのだ。


急速に広がる嫌悪の眼差しに、私はとうとう学園に一人で登校できなくなってしまった。
何もしてこない。それが怖い。ただあの嫌悪を滲ませた瞳で見られることだけが、すごく怖い。

帰っても誰もいない家。おかえりなさい、と言ってほしい。


そう思った私は、マネージャーには内緒で一つの求人を出した。




【ハウスキーパー募集 住み込み 給与は要相談】


胡散臭さ満載だけども、この内容でいいのだ。
面接を直接して、私の補正に引っかかってくれる本物がいれば、それでいいの。

私のこの求人票に本物が引っかかるのは、今から数ヶ月後のことだった。









「ほんっとうにあり得なくない?!」


両親の離婚騒動、意味のわからない面接。それに落ちた僕とカラ松、十四松は、あっさりと家から追い出された。

僕らの手元にあるのは本当に少ない荷物だ。
憤る僕の横では、追い出された事に呆然としている二人。ひとまず二人を立たせて、僕は河原へと足を進める。いつまでもこんな家の前にいることはできない。




ひとまず、河原に座ってこれからを考える。
どうしよう、どうしよう。

手元にあるお金は約30万円。母さんと父さんから与えられたなけなしのお金だ。




でもこんなお金じゃ一ヶ月しか暮らしていけない。そのあとはどうする。三人仲良く死んでやろうか。


物騒なことを考え出した瞬間、十四松が一枚のチラシを持ってきた。

「チョロ松兄さん」


【ハウスキーパー募集中 住み込み 給与は要相談】


「怪しすぎる!!」


でもその住み込み、という言葉に僕はその面接を受けるため、そこに書かれている電話番号へと電話をかけたのであった。


数回のコールのあと、電話が繋がった。

『もしもし』

「突然のお電話すみません。あの、松野チョロ松と申します。ハウスキーパー募集中のチラシを見て、お電話させていただきました。まだ募集はしていますでしょうか?」

『募集…はい、しています』

「本当ですか!あの、ぜひ面接をしてほしいのですが!」

『勿論です。今どちらにいらっしゃいますか?』

「え?今は〇〇の河川敷におりますが…」

『では、今から30分後に〇〇駅のスタバァで待ち合わせということでよろしいですか?履歴書は必要ないです』

「え、え、ちょっ」


ぶつりと一方的に切られた電話をしまって、僕は固唾を飲んでこちらを見ていた二人を見る。


「とりあえず、駅のスタバァに行くぞ」


履歴書はいらないって言われたから、もうダメ元でこの服のままいってやる!!






これでもう50人目。
私の計画は失敗に終わるのだろう。

面接をして、落ち込んで、面接をして落ち込んで。
あまりのがっかりぶりは仕事にも出てしまっていたようで、私のファンから心配の声が届きまくっていた。


これでダメだったら、終わりにしよう。


一方的に場所と時間を告げて切った携帯を一度机に置き、私は出かける準備を始めた。




「こんにちは、松野チョロ松さん」

「え、あなたは…」

スタバァの中で目を引く緑と青と黄色のパーカー。
この時間のスタバァは本当に人が少なくなるから、多分この人だろうと声をかけた。

声をかけて


「あなたたちを採用させていただきます」


見つけた。
私を見た瞬間に濁る瞳、笑顔。
緑も青も黄色も同じ笑顔で私を見ていた。


きっと、私も同じ顔をしている。


「よろしくお願いします」

聞けば家がないらしい。好都合だ。
彼らを、私は自分の家へと連れて帰った。

これで彼らは私のものだ!!














家に着いてまず彼らにしてもらったのは、入浴。
私と同じ匂いをして欲しかった。それには1番手っ取り早い方法だ。


「お風呂ありがとう!」

「お風呂すっげー広いの!思わずシンクロしちゃった!一人で!」

「飛び散った水滴は拭いてきたんだが、その、すまない!」

出てきた三人は全員私と同じ香りをしていて、嬉しい。
そうか、私の被害者たちはみんなこんな気持ちだったのか。

「楽しんでもらえたようで嬉しい!私たちはこれからは家族だから、遠慮なんてしないでね!」

「家族!あの超人気アイドルと!嬉しいなぁ!」

チョロ松が心底嬉しそうに笑う。

「でも、ほんとーにいいの?人気アイドルなら、こういうすきゃんだる?とか気をつけなきゃいけないんでしょ??」

「そ、そうだ。いいのか?芸能界で干されないか?」

十四松とカラ松が心配そうに私の顔を覗き込むので、私は携帯を出してカメラを起動させる。
インカメラにして上に持ち上げて、自撮りのポーズ。
カメラを下ろして画像確認。
うんうん、四人ちゃんと写ってる。

「これブログにあげていい?」

「「「え?!」」」


「大丈夫だよ、私のファンは、逆に喜んでくれるよ」




だって、私のファンだもの。










ブログにあげたあの写真へのコメントは、私へのお祝いコメントで埋まっていた。


「私の新しい家族。これから、もっと幸せになれる気がする。みんなも応援してくれると、嬉しいなぁ」



私のプロフィールは、天涯孤独、身寄りなし、国籍不明、出身地不明。

だから、新しい家族という言葉がきっとファンたちに受け止められた。






「ね?」

コメント欄を見せると、カラ松が困ったように笑った。

「参ったなぁ。新しい家族が君であることが、すごく嬉しい」


カラ松、それは私の言葉だよ。






もうすぐクリスマス。クリスマスイベントはもちろんあるけど、新しくできた家族のための時間をつくることも大切だ。


「あのね、今日のご飯は唐揚げの予定だったんだけど、一緒に買い物に行かないかな」

嘘。一人ぼっちになっていたせいで食欲なんて全く湧かなかった。ずっとお粥ばっかりだったから、体はがりがりでアバラはくっきり。こんなに醜い身体なので水着なんて到底着れないのです。
でも、三人が私に捕まってくれたお陰で食欲が急激に戻ってきた。

お腹が空いた!


輝く三人の笑顔に私も嬉しくなる。


これから四人で暮らすんだ。必要なものも買わなくちゃ!


「食器に、服に、ほかにはなあに?何が欲しい?」

「なんでも買ってくれるの?」

「もちろんだよ十四松!」

「じゃあね!じゃあね!おれ、お揃いが欲しい!チョロ松兄さんと、カラ松兄さんと、君とおれの、四人だけのお揃いが欲しい!」

「いいなそれ」

「流石十四松、そうしよう。ね!」

「お揃いって素敵な響きだね!」

トントン拍子で話が進んでいく。
ああ、ああ。

一人ぼっちじゃないのがこんなに嬉しいなんて!

今までの私の被害者と同じ立場になってしまったけれど、いいのだ。
だって、私は今!幸せなんだもの!!


「じゃあ、お揃いのスマホなんてどうかな?今持ってる奴は解約して、1番最初のメモリーにお互いの番号を登録するの。どう?素敵じゃない?」

私の提案に、三人はキョトンとして、嬉しそうに頷いてくれた。

「君のプライベート用のスマホも、もちろん解約してくれるんだろう?」

カラ松がそう聞いてくるので、当然のことだと頷いた。

「当たり前だよ。私はもう、君達がいればいいんだ」


ファンのみんなは別だけどね。彼らも、私を支えてきてくれた大事な存在だ。


そう告げれば三人はまさに蕩けるような笑顔を浮かべてくれた。


「車とかはないから、歩きになっちゃうんだけど、構わない?」

「おれたち車の免許あるよー!」

「じゃ、車も買っちゃうか」



今までの使われることのなかった私の給料の出番です。



「そういえば、カラ松、もうイタイ発言はしないの?」

「あの子に好きなってもらいたいのは、嘘で固めた俺じゃないからな」

「ふふふ、そっか」





ああ、なんて素敵なクリスマスプレゼントなんでしょう!





このあとテレビで三人の紹介がされて驚愕する扶養組がなんとか保留組に連絡を取ろうとするけど解約されちゃってるから連絡がつかないっていう。
ヒロインちゃんの世界はファンと保留組の三人で完結しちゃっている。





保留組が頼み込めば扶養組の枠もできるかもしれない


prev|back|next


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -