ジグソーパズル | ナノ
(6ピース目)


 「罰だよ」
 驚いている私に、友里は煙草に火を点けながら言う。
 「罰?」
 「中学時代、ずっと見ていたのに、気が付かなかった罰。それと」
 友里は美貴を見る。
 「私以外の奴と、キスをした罰」
 「何を言っているのか、意味が分からない」
 「マリーは真面目過ぎんだよ。型にはめて、何でも思い込もうとしてさ。今だって女同士でって思ってたでしょ?」
 美貴がすっと立ち上がる。
 「どこに行くの? そこに座って居なさい」
 少しきつい口調で、友里が言う。
 「この子、ヤキモチ妬きで、あんたが来るって聞いた途端、怒りだして仕方がなかったんだ。私は美貴だけのもんだから、安心しろっていうのに、聞かないで困ったよ」
 「だ、だったら尚更まずいじゃない。こ、こんなことしちゃ」
 「そうだね。まずいよね」
 友里は美貴を引き寄せて、濃厚なキスを始める。
 私は荷物を抱えると、部屋を飛び出した。
 扉にもたれ掛り、私はその場から立ち去られないでいる。躰の奥に、火が点いたように火照っていた。
 この扉の向こうで、何がされているのかが、知りたかった。
 
 「戻って来ると思った」
 美貴を膝の上に座らせた友里が微笑む。
 「たまには、刺激がないとね。あんたは、からかいやすいから良いわ。この子も分かってくれたしね」
 屈折していると思った。
 どこでねじれてしまったのだろう。ビールを注がれたグラスを手に、友里をそっと見る。
 あの頃も、こけしのようにかわいらしい顔をしていると思ったけど、化粧をするようになってから、もっとそれが映える様になった気がする。
 「で、頼みって何?」
 「友達が妊娠して、その承諾書を書いてくれそうな人を探しているんだけど」
 「相手の男に、やらせればいいじゃない?」
 酔いが回った美貴が、口を挟む。
 「それが家庭もちで、ダメみたいなんだ」
 「ああ嫌だ。男はずるくて吐き気がする」
 そう言う友里を、うっとりとした目で美貴が見て頷く。
 どうにでもしてくれと、やけ気味に私はグラスを空にする。
 「一人だけ頼めるかも」
 友里が、煙草の煙を天井に向かって吐き出しながら言う。
 「誰?」
 美貴が訊く。
 眉を顰め、睨むように見る美貴を見て、これは大変だなと思いつつ、私も身を乗り出す。
 「サークル仲間だった奴。今は女しているんだけど、ちょっとそいつに貸があるから、手伝ってもらえると思う」
 私は、思わず吹き出してしまった。
 友里の言葉に、いちいち反応を見せる美貴がおかしかった。[*prev] [next#]
[BKM]
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